メソポタミア美術〜紀元前40世紀から紀元前4世紀に発展した人類最古の文明〜「ウルのスタンダード」「ナラム・シンの戦勝記念碑」「有翼人面の牡牛像」

①年代

紀元前40世紀〜紀元前4世紀にメソポタミアで発展したメソポタミア美術。人類最古の文明。

②地域

現在だとイラン、イラク、シリアにまたがる地域。

③時代背景

メソポタミア文明で中心となった民族はシュメール人
かの有名な「目には目を歯には歯を」のハンムラビ法典や世界最古である楔形文字を発明した民族。

メソポタミア地域は西のユーフラテス川と東のティグリス川という2つの大河川に挟まれた肥沃な土地環境にあり文明が発達した。川底の土は多くの栄養を含んでおり、それが頻繁に洪水を引き起こしていたため農作物が育ちやすい土壌を作っていたためである。

メソポタミア文明は紀元前4千年の農村集落から始まる。
そこでは小麦の栽培や家畜の飼育が盛んに行われ、土器に装飾を施す彩文土器が製作されました。この時代に現在の美術作品のもととなる工芸品が生まれたのです。そして集落の規模が徐々に拡大していき都市国家、つまり小さな国のような姿になっていく。

その後、紀元前4千年中頃から神殿を中心とする都市国家ウルが形成される。
それにより政治的権力を掌握した王や聖職者が登場しヒエラルキーが生まれる。
ヒエラルキーが生まれたことによって当時の王の指示のもと製作された戦勝記念碑や王の権力を誇示するための工芸や建築を中心とする美術が発達していく。
この頃に作られた工芸品は写実的な表現左右対称に作られた構成力のあるものが多く、大理石やレンガなどを用いて彫刻や絵画を作っている。

これらはヨーロッパ美術のルーツになったと言われている。またこの時代、それまでの原始美術と異なり、当時の指導者が中心となって美術作品を作ったという変化は特筆に値する。

④代表作・代表画家

⑴「ウルのスタンダード」

これは紀元前2500年ごろに作られたとされており作者は不明。
スタンダードとは「軍の旗」という意味を表す。
両面に絵が描かれている構成で、片方の面には、戦車や兵隊を従えたウルの王が敵を打ち負かす「戦争の場面」が描かれている。
その反対側の面には山羊や羊、穀物の袋が運ばれ、王と家臣が宴会を楽しむ「平和の場面」が描かれています。

しかし、この工芸品の用途や作成意図は不明と言われている。
この作品はラピスラズリや貝殻などで豪華に装飾されているのが特徴的である。

⑵「ナラム・シンの戦勝記念碑」

紀元前2250年頃に作られこちらも作者は不明。
これは倒した敵を踏みつけている王の姿を描いている。
メソポタミアでは、初期の頃から戦勝記念碑を作らせるのが王たちの慣習だった。

王たちは戦争で敵国を打ち破った話や戦利品を奪い取ってきた話を当時の職人に描かせた。
これによって兵や民と勝利を共有するだけでなく、破れた敵の部族を二度と立ち向かわせないといった、意味が込められている。

⑶「有翼人面牡牛像」

紀元前700年から800年頃に作られた。こちらも作者は不明。

この彫刻の不思議なところは真横から見ると前後4本の脚が彫られているが、正面から見ると前脚が2本見える形で彫られている。
したがって前方斜め横から見ると、5本の脚をもつことになる。
しかし、この彫刻は意図的に5本の脚を作ったのではないといわれている。
共同作業によって別方向から同時に職人たちが制作した結果、間違えて脚が 5本になってしまったそう。

⑤メソポタミア美術のポイント

・メソポタミアは文字や法典などの文明の礎が築かれた人類最古の文明
そして西洋世界の文明のルーツになった。

権力構造のピラミッド=ヒエラルキーが生まれたことによって王が権力を握り、それまでの原始美術と異なる「宮廷美術」が生まれた。

・工芸や建築の素材は、レンガや大理石、貝殻やラピスラズリが使用されている。

コメントを残す