原始美術〜約3万年前から始まる旧石器時代後期の美術作品〜ラスコー洞窟壁画「バイソン」「ヴィレンドルフの女性像」極北美術「ペトログリフ」

①年代

今から約3万年前に始まる旧石器時代後期に、美術的作品というのが見られるようになる。
ここでいう美術的作品というのは「実生活に直接は役に立たない物」をさす。岩に描いた絵というのは、実際に野生の牛を狩る時に役に立つような物ではない。
つまり、洞窟壁画、岩陰に掘られた彫刻、持ち運び可能な土偶のような小さな彫刻、獣の骨に刻まれた線画などが原始美術として挙げられる。

②地域

原始美術が出土している有名な地域

・フランスのラスコー、ペシュ・メルル、ニオー、レ・トロワ・フレール
・スペインのアルタミラ、エル・カスティーリョ
・イタリアのレバンツォ など

③時代背景

人間はこの時代、雨風を凌ぐために洞窟に住んで動物を狩って生活していた。生きながらえていくための動物の確保が生活の大半を占めていた。

男性・女性はおおむね平等。
男性は狩猟、女性は魚取りや育児を仕事にしていたが、この役割はしばしば共有されており、明確な分業はされていなかった。

原始美術は、文化期を迎えるにつれ見られなくなっていく。

④代表作

原始美術で最も有名なものを3つ紹介。

⑴『ヴィレンドルフの女性像』

1つ目は女性の体を模した石像。
胸やお尻が強調された形で、また髪の毛らしき描写もある。
この彫刻は当時の女性の理想像を表現したものだと言われている。
なぜなら原始時代は、食料の確保できるかが不安定な生活だったため、男性女性問わず痩せている人が多かったからである。

⑵『ラスコー洞窟壁画』

ラスコー洞窟壁画はその表現力が見事だと言われている。
洞窟の壁には、バイソンつまり《野牛》が描かれている。
バイソンが向き合う奥には鹿らしき動物や、その上には馬らしき動物の描写もみることができ、遠近法も取り入れているように見ることができる。

他のバイソンを描いた壁画においては、倒れた人間、野牛の大きな肉体、毛並み、飛び出した腸などを見ることができ、狩りの様子をリアルに描いている。

牛のひづめを見てみるとひづめが横からではなく、正面から見たような形で描かれている。これは原始人たちが動物の健康状態を表すひづめという部分を普段からよく観察して、それが絵にも現れたものだといわれている。

このような何かを目的として現実に見える形とは異なった形で描くこと歪曲表現と呼ぶ。

⑶『ペトログリフ』

北欧の極北美術として岩陰に動物や魚や人間や船などをで、岩陰に描いたペトログリフ(岩盤画)。これはノルウェーのアルタに残されている。
先ほど紹介した壁画とは異なり、シンプルに線で描かれている。

⑤原始美術のポイント

・絵の支持体(絵が描かれる媒体)は主に、岩や石、動物の骨や牙。彫刻は粘土で作られた。→元々自然界に存在するものに描いた。

・限られた色ではあるが優れた構成写実性(本物に似せて描く)が見て取れる↔︎色彩表現はあまり見られない。

・絵の題材は主に狩の対象になる動物(シカ、カモシカ、牛、バイソン、ヤギ、馬など)↔︎山や川、草花の表現はあまり出てこない。