アルテ・ポーヴェラ

概要

アルテ・ポーヴェラは、1960年代後半〜70年代初頭のイタリアで生まれた、土・石・木・ボロ布・鉄くずなど素朴で安価な素材を用いてアートの本質を問い直した運動です。 完成したオブジェよりも「並べる・積む・結ぶ」といった行為やプロセスを重視し、学生運動や労働争議が高まる中で資本主義や大量消費社会への批判として展開しました。

出典:TATE
Clotheshanger of the North 1981
Luciano Fabro(ルチアーノ・ファブロ)

出典:wikiart
Untitled (Sculpture That Eats)
Giovanni Anselmo(ジョヴァンニ・アンセルモ)
Original Title: Senzo titolo (Scultura che mangia)
Date: 1968

ヤニス・クネリス

出典:historia-arte
Jannis Kounellis
Grecia, 1969

出典:VernissageTV
VTV Classics (r3): Jannis Kounellis: Untitled (12 Horses) (2006)

本作は、ローマのギャラリー新スペースに12頭の馬を一定間隔で繋ぎ留め、観客はそのあいだを歩きながら、匂い・音・体温といった「生の感覚」を体験します。 普段の美術館から排除されがちな汚れや臭い、生き物の存在をそのまま持ち込むことで、何がアートの場にふさわしいのか、ギャラリー空間は何を排除しているのかを観客に意識させる作品です。

マリオ・メルツ

出典:Google Arts & Culture
Senza titolo (Triplo igloo)
Mario Merz1984 - 2002

《Senza titolo (Triplo igloo)》では、入れ子状の3つのイグルーのフレームに、自然界の成長パターンと関わるフィボナッチ数列の数字がネオンで取り付けられ、自然のリズムと工業的な光が重ね合わされています。 一時的な住まいを思わせるかまくら状のかたちは、安定した家にとどまらない、移動し続ける生のあり方を示し、「別の暮らし方」を観客に想像させます。

ミケランジェロ・ピストレット

出典:wikiart
The Form of the Mirror
Michelangelo Pistoletto
Date: 1978

出典:wikiart
Standing Man (Mirror Painting)
Michelangelo Pistoletto
Date: 1962

出典:wikiart
Venus of the Rags
Michelangelo Pistoletto
Date: 1967

ミケランジェロ・ピストレットは、鏡面に人物像などを刷り込んだ「鏡の絵」を描くアルテ・ポーヴェラを代表する作家です。 ステンレスの鏡面プレートにシルクスクリーンで人物や日常の場面を転写し、鑑賞者や周囲が映り込むことで、印刷された像と現在の光景が一枚の画面で交差します。

ジュゼッペ・ペノーネ

出典:wikipedia
Penone's The Hidden Life Within
Alberi

ジュゼッペ・ペノーネは、製材された梁を掘り進めて年輪に沿った元の幹を掘り出し、木の中に眠る若い木の姿と「成長の時間」を可視化しました。

アルテ・ポーヴェラの作家たちは、土や枝などの自然素材とガラスや鉄、ネオンなどの工業素材を組み合わせ、朽ちたり錆びたりする「変化し続ける作品」で自然と産業、時間と変化、消費社会とアート市場の価値観を根本から問い直しました。 単に安い素材を使うのではなく、素材の選択そのものをメッセージとし、「何が価値あるアートなのか」を揺さぶる実践だったのです。