ネオ・ポップ
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概要

出典:wikiart
Overdose
Michel Majerus
Date: 1997

出典:MoMA
Installation view of "Power of the Panda: Circle of Giving"
by Rob Pruitt in the P.S. 1 exhibition "Greater New York"
ロブ・プルイット
1960年代のポップアートは、広告やコミック、量産品パッケージといった大衆文化のイメージを美術館に持ち込み、「ハイアートと大衆文化の境界」を揺さぶった最初の世代でした。それに対して1980年代以降のネオポップは、グローバル化したメディアと加速する消費社会の中で、「キッチュ」「商品」「ブランド」「キャラクター」といった記号を素材に、ポップアートの方法をポストモダンの感覚でアップデートした世代だと言えます。

出典:wikipedia
"Best Buddies Friendship" Bear, in Mühlenstraße in Berlin-Friedrichshain in front of the O2 World
ロメロ・ブリット
ネオポップは、「イメージが現実を上書きする」時代感覚を前提に、「イメージ商品としてのアート」や「ブランド化された作家」といったテーマを前面に出しました。キッチュで光沢のある造形や、大量生産品を思わせる表面をあえて強調することで、アートと商品、ハイアートとマスカルチャーのあいだの境界そのものを、作品の主題として押し出した動きだと言えます。

出典:Fondation Louis Vuitton
Cardboard Monster & Cardboard Monster : Rosie
2010
Rob Pruitt(ロブ・プルイット)
ジェフ・クーンズ

出典:wikiart
Rabbit
Jeff Koons
Date: 1986

出典:wikiart
Ballon Dog
Jeff Koons

出典:wikipedia
Michael Jackson and Bubbles
ジェフ・クーンズは1980年代から活動するネオポップ/ネオジオを代表する作家です。風船や置物のような大衆的なモチーフを、鏡面仕上げのステンレスや金彩磁器で巨大化・高級素材化することで、「キッチュ」と「高級美術」の境界を意図的に崩します。「皮肉ではなく肯定だ」という姿勢で大衆文化をそのまま美術に持ち込み、消費社会の価値観そのものを作品化しています。
ハイム・スタインバック
ハイム・スタインバックは、ネオジオ、ネオポップなど、あらゆるジャンルで横断的に語られる作家です。ボードリヤールのシミュラークル概念を背景に、日用品や雑貨、キャラクターグッズをアプロプリエーション、つまり、流用し、棚の上にそのまま並べて作品にします。

出典:MoMA
Haim Steinbach. supremely black. 1985

出典:Guggenheim Foundation
Haim Steinbach
ultra red #2

出典:Serpentinegalleries
Haim Steinbach Shelf with Ajax 1981

出典:TATE
Untitled (Locks, Friar, Sister) 1987
ハイム・スタインバックはデュシャンのレディメイドを継承しつつも、独自の重点を「配置」「文脈」「モノ同士の詩的な共鳴」に置きます。「私たちは言語で伝え合うように、モノを通じて伝え合っている」という彼自身の言葉が示すように、何を選びどう並べるかによって意味と文脈が変わる。その「ディスプレイという儀式」そのものを作品化しているのです。
鑑賞者は色・形・言葉、あるいは自分自身の記憶からモノ同士の関係性を読み解くよう誘われます。消費社会における商品の記号性への批評でもあり、モノへの人間の欲望や愛着の探求でもある、一筋縄ではいかない実践です。
ケニー・シャーフ


出典:Portland Art Museum
Kenny Scharf, Cosmic Cavern
村上隆

出典:MoMA
Takashi Murakami
727
1996
村上隆の《727》は、アニメ・マンガ文化から生まれたキャラクター「Mr.DOB」が波に乗る3枚続きの絵画です。約20層のアクリル絵具を重ねて磨いた背景は、村上が学んだ日本画の伝統を思わせます。ポップな図像と日本の古典技法を融合させたこの作品は、高尚な芸術と大衆消費文化を一枚の平面に押し込む「スーパーフラット」理論を先取りしています。
奈良美智

出典:MoMA
Yoshitomo Nara
OH! MY GOD! I MISS YOU.
(2001)

出典:MoMA
Yoshitomo Nara
Spockie
2002

出典:MoMA
Yoshitomo Nara
Untitled (Eye Patch)
2012
1980年代半ば以降のネオポップに連なる作家たちは、サブカルチャー、キッチュな置物、ブランドロゴ、キャラクターといったモチーフをそのまま、あるいは誇張して用いることで、高級アートと大衆文化、アートと商品、作家とブランドの境界を意図的にあいまいにしてきました。
ネオポップは、1970年代のミニマリズムやコンセプチュアルアートへの反動として登場します。抽象や観念に振り切れた時代への反発として、具象・表面・スペクタクル、そして「楽しさ」を美術に呼び戻したのです。
1960年代のポップアートが大衆文化を美術館に招き入れながらも批評的な距離を保っていたとすれば、80年代以降のネオポップはその距離を消し去りました。キッチュや商品性を積極的に抱擁し、アーティスト自身がブランドとして振る舞う——「自分もまたイメージ商品として生きている」という感覚を戦略的に引き受けてみせたのです。楽しさと違和感、肯定と批評が分離できないまま同居している。それがネオポップの本質的な複雑さです。


