ストリートアートのグローバル展開

概要

2000年以降のストリートアートは、20世紀末のグラフィティやスプレー作品から出発しつつ、今日では社会批評、コミュニティとの協働、巨大な壁画プロジェクトへとグローバルに展開していきます。

出典:wikipedia
The ghosts from the computer game Pac-Man. A mosaic by Invader in Bilbao (BBO 24–27), near the Guggenheim Museum. 2008

出典:wikipedia
Vhils
artwork in Covilhã

出典:wikipedia
Barry McGee Mural on Houston and Bowery

バンクシー

出典:wikipedia
Girl with balloon

バンクシーの《Girl with Balloon》(2002)は、ロンドンのサウスバンクやショーディッチの壁に出現したステンシル作品で、手を伸ばす少女と、風に流されるハート型の赤い風船だけ、という非常にシンプルな構図で描かれています。このイメージは、「希望」「失われた無垢」と解釈されていますが、Banksy自身は意図を明かしていません。

オス・ジェメオス

出典:TheVancouverBiennale
HOW ART GOES PUBLIC | Installation of GIANTS by OSGEMEOS

オス・ジェメオスは、サンパウロ出身の双子によるグラフィティ・アート・デュオです。世界各地で継続中の《Giants》シリーズでは、コンクリート・サイロやビルの外壁全体に巨大な黄色い肌の人物像を描き、産業構造物そのものを「物語を持つ巨人」へと変容させてきました。彼らの黄色いキャラクターは特定の民族を表すものではなく、誰もが自分を重ねられる普遍的な存在として描かれています。殺風景な産業インフラを物語を持つ人物に見立てることで、都市空間への親近感と誇りを呼び起こし、「すべての都市にアートが必要だ。アートは人々のただ中にあるべきだ」というのが彼らの理念です。

JR

出典:wikipedia
Irbid, Jordan, "We are Arabs. We are Humans"

出典:wikipedia
"Time is Now, Yalla!", Israel/Palestine

フランス出身のJRは、巨大な白黒写真を街の建物に貼るプロジェクトで知られています。代表作《Inside Out Project》(2011–)では、世界中の人々が自分自身のポートレート写真をオンラインで送ると、それを大判のポスターにして返送し、参加者が壁に貼るという仕組みになっています。線路沿いやビルの壁一面に地元の人びとの顔写真が並ぶことで、「匿名の都市空間」が「そこに暮らす人々の顔」を持ち始めます。

Blu(ブルー)

出典:actipedia
Estado Asesino

イタリアのBlu(ブルー)は、政治的なメッセージを前面に出した巨大壁画で知られる作家です。メキシコで描かれた《Estado Asesino》では、メキシコ国旗の色を、緑のドル札、白いコカインのライン、赤い血の海として描き、その周囲を軍隊や治安部隊が取り囲んでいます。一見カラフルでポップなイメージですが、国家・資本・麻薬・暴力が絡み合った現状への強烈な批判になっており、歩道から見上げる人々に対して、政治状況を視覚的に突きつける役割を果たしています。

ストリートアートは「違法な落書き」ではなく、都市空間を再解釈し、人々の顔や物語、怒りや希望を、直接街中に出現させるメディアとして機能しています。ストリートアーティストにとって、壁やインフラは、市民の声や記憶、政治的メッセージを共有するためのキャンバスといえます。