東アジアコンテンポラリー(2000s〜)

概要

出典:wikipedia
Singapore Biennale on Orchard Road, Singapore.
Yayoi Kusama(草間彌生)

2000年代以降、日本とアジアのアートは、ローカルな歴史や精神性と、グローバルなネットワークやテクノロジーを同時に引き受けるかたちで展開してきました。村上隆、奈良美智、草間彌生といったスター作家が世界市場でよく知られる一方で、インスタレーションやメディアアート、パフォーマンス、サウンド、デジタル技術を使いながら、「記憶」「身体」「データ」「移動」をテーマにした作家たちが活躍しています。

塩田千春

出典:TEMPLON
Chiharu Shiota, The Key in the Hand, Biennale de Venise 2015

塩田千春は、糸と日用品を使ったインスタレーションで「記憶」と「不在」を可視化する作家です。ヴェネツィア・ビエンナーレ日本館の《掌の鍵(The Key in the Hand)》では、世界中から集めた約5万本の古い鍵を赤い糸で天井から吊り下げ、その下に木製の舟を2艘据えました。鍵は人々の生活や記憶の蓄積を、赤い糸はそれらを結ぶ見えない関係を、舟は思い出を受け止めて未来へ運ぶ「手」のような存在を象徴しています。

森万里子

出典:MORI ART MUSEUM
森万里子
《Wave UFO》
1999-2002年

池田亮司

出典:Star71us
Ryoji Ikeda - Datamatics

池田亮司は、音とデジタルデータを素材にしたミニマルなサウンド/ビジュアル作品で国際的に評価されています。シリーズ《datamatics》では、数字の列や座標データなど抽象的な情報を、高速で変化する白黒のパターンと精密な電子音として提示しました。情報社会を支える「見えない数値世界」を、光と音の純粋な体験として身体で感じさせる試みです。

宮島達男

宮島達男は、LEDの数字カウンターを用いた作品で「時間」と「生と死」をテーマにしてきた作家です。代表作《Mega Death》では、2,400個の青いLEDカウンターが壁面を埋め尽くし、それぞれが1から9までの数字を異なるリズムで刻み、0だけは決して表示されません。観客が空間に入ると一斉にカウンターが消灯し、真っ暗な静寂のあと、再び数字が点灯し始めることで、20世紀の大量死と、個々の命の循環が体験として立ち上がります。

出典:MCA Australia
Tatsuo Miyajima: Connect with Everything

名和晃平

出典:美術手帖
名和晃平「PixCell」

曹斐(ツァオ・フェイ)

出典:Public Delivery
Cao Fei (曹斐) - Whose Utopia, 2006

曹斐(ツァオ・フェイ)の映像作品《Whose Utopia》は、珠江デルタ地域のOSRAM電球工場での6カ月のアーティスト・イン・レジデンスから生まれたもので、生産ラインで働く工場労働者たちの日常と、彼らがバレリーナやロックギタリストなど「自分の夢」を演じる姿が交互に現れます。蛍光灯が並ぶ工場の白い光の中で、制服姿の労働者が静かに踊り始める光景を通して、グローバル資本主義の規律と個人のユートピアのあいだのギャップが、詩的かつ批評的に描かれています。

李昢(イ・ブル)

出典:wikipedia
イ・ブル

キム・スージャ

キム・スージャは、「ボッタリ(風呂敷包み)」や自身の立つ姿を通じたパフォーマンス/ビデオ作品で知られる韓国出身のアーティストです。シリーズ《A Needle Woman》では、世界各地の都市の真ん中に、背中を向けてじっと立ち続ける自分の姿を撮影し、移民や観光、都市の流動性の中で「身体という針」が空間を縫い合わせるようなイメージを生み出します。

出典:Pierre Menard
A Needle Woman, par Kimsooja

2000年代以降の日本・アジアコンテンポラリーは、「メディア/データ」「記憶/トラウマ」「身体/移動」「都市/仮想空間」といったテーマを、それぞれの地域の歴史や生活世界と結びつけながら、多様なかたちで展開していることがわかります。