写真とコンセプチュアル・アート

エド・ルーシャ

現代アートにおいて写真は、アイデアを伝えたり、社会や歴史のあり方を問い直したりするための表現手段になりました。

出典:wikipedia
Cover of Twentysix Gasoline Stations by Edward Ruscha

出典:TATE
Edward Ruscha 'Twentysix Gasoline Stations' 1963

エド・ルーシャの写真集『Twentysix Gasoline Stations』(1963)は、26のガソリンスタンドを淡々と撮影し本にまとめた作品です。日常的な風景を量産型の本というフラットな形式で提示し、「これがアート?」という問いを投げかけました。

ベッヒャー夫妻

出典:Guggenheim NewYork
Water Towers
Bernd And Hilla Becher(ベッヒャー夫妻)

出典:wikiart
Gas Tanks
Bernd and Hilla Becher
Date: 1983 - 1992

ベッヒャー夫妻は、給水塔や冷却塔などの工業建築を、曇天下で真正面から撮影し、同じ種類の建物をグリッド状に並べる「タイポロジー(類型学)」作品で知られるドイツの写真家ユニットです。1950年代末から始まったこの厳密な方法は、19世紀の記録写真の客観性を引き継ぎながら、ミニマリズムやコンセプチュアル・アートの反復的な形式とも共鳴しています。

ジェフ・ウォール

ジェフ・ウォールは、写真を大判の「タブロー(絵画的な一枚絵)」として提示する作家です。1970年代末から、ライトボックスにカラー透過フィルムを入れて展示する形式を用い、ドラクロワやマネの構図を参照しながらスタジオで綿密に構成された場面を撮影しました。ウォール自身はこれを「ニア・ドキュメンタリー」と呼び、写真の記録性とフィクション性のあいだを探っています。同時期にシンディ・シャーマンも、映画のワンシーンのような場面を自ら演じる「アンタイトルド・フィルム・スチル」で、写真を構築されたイメージとして提示しました。

出典:ART CANADA INSTITUTE
The Destroyed Room, 1978
Transparency in lightbox, 159 x 229 cm
National Gallery of Canada, Ottawa

出典:wikipedia
The Death of Sardanapalus by Delacroix
ドラクロワ「サルダナパールの死」

出典:wikipedia
Picture for Women

出典:wikipedia
Édouard Manet A Bar at the Folies-Bergère
エドゥアール・マネ「フォリー・ベルジェールのバー」

出典:wikipedia
Untitled Film Still 21 (Cindy Sherman photograph)
シンディ・シャーマン

杉本博司

杉本博司は「時間」と「存在」をテーマにした日本出身の写真家です。「劇場」シリーズでは映画一本分を長時間露光で撮影し、スクリーンを白い光の矩形として写し出しました。「海景」シリーズでは世界各地の海と空だけを水平線で二分する構図で撮影しています。光が積み重なった時間や太古から変わらない風景を捉え、時間の厚みを感じさせる作品として評価されています。

出典:wikiart
Cabot Street Cinema, Massachusetts
Hiroshi Sugimoto
Date: 1978

出典:wikiart
Seascape: Sea of Japan
Hiroshi Sugimoto
Date: 1997

アンドレアス・グルスキー

アンドレアス・グルスキーはベッヒャー夫妻に学んだ写真家で、巨大なカラー写真でグローバル資本主義の景観を描いています。スーパーの棚やライン川を高い視点とデジタル編集で撮影し、商品や風景が抽象的パターンに見える画面を作り出しました。

出典:wikipedia
99 Cent photograph
Andreas Gursky

出典:wikipedia
Rhein II
Andreas Gursky

出典:wikiart
Paris Montparnasse
Andreas Gursky
Date: 1993

トーマス・ルフ

トーマス・ルフはベッヒャー門下の写真家です。1980年代の《Porträts》では、表情のない正面向きの顔写真をフラットに撮影し、人物の内面より「顔写真」という形式自体を前景化しました。

出典:MoMA
Thomas Ruff
Portrait
1989

出典:TATE
Thomas Ruff
Portrait 1983

出典:MoMA
Thomas Ruff. jpeg msh01. 2004

トーマス・ルフの2000年代の《Jpegs》では、ネット上の低解像度画像を拡大し、圧縮ノイズで崩れた画面を大判プリントで提示。デジタル画像の劣化が抽象絵画のような質感となり、「デジタル写真とは何か」を問いかけています。

ヴォルフガング・ティルマンス

ヴォルフガング・ティルマンスは、クラブカルチャーや日常のスナップから抽象的なカラーフォトまで多様な作品を手がけます。展示ではサイズの異なる写真を壁にピン留めしたり机に置いたりと自由に配置し、イメージ同士の関係性を見せています。

出典:wikiart
Chloë Sevigny
Wolfgang Tillmans
Date: 1995

出典:wikiart
Lutz Alex Sitting in the Trees 1
Wolfgang Tillmans

コンテンポラリーアートにおける写真は、記録や風景描写を超え、コンセプトの提示、歴史や時間の探究、資本主義やメディアへの批判、個人の経験や共同体の感覚の可視化など、現代社会を読み解くための役割を担ってきたことが見えてきます。

写真とコンセプチュアル・アート(その他アーティスト)

出典:The Metropolitan Museum of Art
Washington, D.C.
Stephen Shore(スティーブン・ショア)
November 1972

出典:MoMA
Thomas Struth(トーマス・シュトゥルート)
Clinton Road, London
1977

出典:TATE
Zeichensaal (Drafting Room)
1996, Thomas Demand(トーマス・デマンド)