サイトスペシフィック・アート
目次
概要

出典:smarthistory
Gordon Matta-Clark, Splitting
取り壊し予定だったニュージャージー州エングルウッドの郊外住宅を「都市危機の現場」として選んだ作品。家をチェーンソーで縦に切断し、V字に開くことで光の裂け目を生み出しました。本作は、近代建築と都市再開発への批判と、その崩壊に伴うモダニズム終焉のメランコリーを可視化したサイトスペシフィックな作品です。
サイトスペシフィック・アートとは、特定の場所の空間構造や歴史、社会・政治的文脈を読み込み、その場への応答として制作される作品です。
リチャード・セラ

出典:wikipedia
Tilted Arc, Richard Serra, 1981
リチャード・セラ《Tilted Arc》(1981)は、ニューヨーク連邦ビル前広場に設置された巨大な鉄板の壁の作品です。通行する人々の動線と視界を変えるサイトスペシフィック作品として制作されました。しかし「不快だ」「税金の無駄だ」と批判され、激しい論争の末に1989年に撤去されました。作家は「移設することは作品の破壊だ」と主張し、この事件は公共空間におけるアートの役割をめぐる象徴的な論争として語り継がれています。
マヤ・リン

出典:wikipedia
View of names etched into the granite face of the Vietnam Veterans Memorial
マヤ・リン《ベトナム退役軍人記念碑》
ベトナム戦争で亡くなった、米兵一人ひとりの名前を黒い壁に刻み、来訪者が自分の姿をその名とともに映して見ることで、英雄的な彫像ではなく、個々の死と喪失、そして社会に残る深い傷を静かに追悼し、和解と癒やしの場をつくることを目指した記念碑です。
ランドアートも多くがサイトスペシフィックですが、後者は自然環境に限らず、都市空間や建築、歴史的な場所など広いコンテクストをもつ「場所」を前提にした実践として語られてきました。その問題意識は、パブリックアートやソーシャルプラクティスと重なり合いながら展開しました。

