モダニズムの限界

何を描くかより、どう描くか

出典:wikipedia
Paul Cézanne, Still-Life with Green Melon

出典:wikipedia
1910, Woman with Mustard Pot
Pablo Picasso

出典:wikipedia
Georges Braque, 1908, Maisons et arbre

印象派以降、画家たちは宗教や歴史といった物語よりも「絵の装飾や表面、形式」に関心を向けます。セザンヌは風景やリンゴを、円柱や球といった構造として捉え直し、世界を形と色の関係として組み立てました。 この考え方に影響を受けたピカソやブラックのキュビスムは、対象を分解・再構成し、「見えたままの再現」ではなく、見えない構造や複数の視点を画面に持ち込むことで、抽象絵画への道を開きます。

フォーマリズムという思想

出典:wikipedia
クレメント・グリーンバーグ

批評家クレメント・グリーンバーグは、「モダニズム絵画は自らの媒体の純粋性を追求すべきだ」と主張し、絵画の本質を「平面性」と「色と形の関係」に求めました。 抽象表現主義のポロックやロスコは、画面全体に絵具を散らしたり、大きな色面を重ねたりすることで、何かを描いた絵ではなく、色と形そのもの、つまり、フォルムを前面に押し出したのです。

出典:wikipedia
Yellow-Red-Blue, 1925
ワシリー・カンディンスキー

出典:wikipedia
Portrait of Mikhail Matyushin
カジミール・マレーヴィチ

出典:wikipedia
Kazimir Malevich - 'Suprematist Composition
カジミール・マレーヴィチ

出典:wikipedia
Victory Boogie Woogie (1942–1944)
ピート・モンドリアン

カンディンスキー、マレーヴィチ、モンドリアンらは、対象を捨てた純粋抽象へ踏み込み、幾何学的な形と色だけで感情や精神性を表そうとしました。抽象表現主義はその延長上で、「作者の行為」や「身体性」を画面に刻み込みます。ポロックのドリッピングは、床に置いたキャンバスに絵具を垂らし、身体の動き自体を軌跡として残すもので、のちのパフォーマンスやコンセプチュアル・アートにも大きな影響を与えました。

出典:wikiart
Number 3
Jackson Pollock
Date: 1948

モダニズムの限界と反発

出典:wikipedia
Marcel Duchamp, 1917, Fountain
マルセル・デュシャン

出典:wikiart
L.H.O.O.Q, Mona Lisa with moustache
Marcel Duchamp
Date: 1919

フォーマリズムが行き過ぎると、「色と形だけ」を追求すること自体が目的化し、難解な抽象や単色画面は美術館やギャラリー内部の内輪的なゲームのように感じられるようになります。
この状況に真っ先に異議を唱えたのが、マルセル・デュシャンでした。それも、抽象表現主義が隆盛するはるか以前、1917年のことです。彼は便器をそのままギャラリーに持ち込み、「アーティストの選択という行為そのものが、作品足り得るのではないか」と鑑賞者に問いかけました。

これにより「作品の本質は見た目ではなく、アイデアや文脈にある」というコンセプチュアルな思考が、やがてアート界全体に浸透していきました。

出典:wikiart
Campbell's Soup Can (Tomato Rice)
Andy Warhol
Date: 1961
アンディ・ウォーホル
ポップアート

出典:wikiart
One and Three Lamps
Joseph Kosuth(ジョセフ・コスース)
Date: 1965
コンセプチュアルアート

出典:wikiart
Untitled
Donald Judd
Date: 1992
ミニマリズム

1960年代以降、ポップアート、コンセプチュアル・アート、ミニマリズムが次々と現れ、アートの中核は「純粋な絵画」から「コンセプトと文脈によって読まれるもの」へと転換しました。今日の現代アートの特徴は、まさにこのコンセプチュアルな傾向にあります。絵画の純粋さを求める代わりに、引用、物語、政治性、文化的背景、コンセプトを自由に混ぜ合わせる動きこそが、ポストモダン時代の主なテーマとなっていきます。