リレーショナル・アート

概念

リレーショナル・アートは、人と人の交流や関係が生まれる場をつくることを重視する芸術です。フランスのキュレーター、ニコラ・ブリオーは、1990年代に広がったこうした実践を「関係性の美学」として理論化しました。

リクリット・ティラヴァーニャ

出典:The Museum of Modern Art
Rirkrit Tiravanija | Untitled (Free/Still)

出典:MoMAps1
untitled 1992-1995 (free/still)

リクリット・ティラヴァーニャは、ニューヨークの303ギャラリーで、タイカレーを作って来場者に無料でふるまう《untitled (free)》(1992年)作品を発表しました。ギャラリーは展示空間というより「台所付きの集会所」となり、観客は作品を眺めるのではなく、食事をしながら他者と会話する参加者へと変わります。

フィリップ・パレーノ/ピエール・ユイグ

フィリップ・パレーノとピエール・ユイグは、1999年に日本の会社から、物語や個性をほとんど持たないマンガ用キャラクターの権利を購入し、「アンリー」と名づけました。二人は複数の作家にアンリーを提供し、映像、絵画、ポスター、音楽などを通して、それぞれが新たな物語や人格を与えました。2002年には著作権をアンリー自身に移し、それ以上商業的に利用できないようにしました。《No Ghost Just a Shell》(1999–2002)は、キャラクターの作者や所有権、共同制作について問い直したプロジェクトです。

出典:Art21
Pierre Huyghe: "Anlee" | Art21 "Extended Play"

出典:Artforum Media
Pierre Huyghe and Phillippe Parreno, The Ann Lee Project, 2002.

リアム・ギリック

出典:wikiart
Liaison Structure
Liam Gillick
Date: 2005

出典:wikiart
Returning to an Abandoned Plant
Liam Gillick
Date: 2007

カールステン・ヘラー

出典:wikipedia
Test Site by Carsten Höller at the Tate Modern, London.

出典:wikipedia
Test Site at the Tate Modern

出典:VernissageTV
VTV Classics (r3): Carsten Höller: Test Site. Tate Modern, London (2006)

フェリックス・ゴンザレス=トレス

出典:wikipedia
"Untitled" (Portrait of Ross in L.A.)

リー・ミンウェイ

出典:Lane216East
LEE Mingwei: The Mending Project

リー・ミンウェイは、リレーショナル・アートの中でも、親密さとケアの側面に焦点を当てる作家です。彼は他者の衣服を無料で修繕する《The Mending Project》や、見知らぬ人と一対一で食事をするプロジェクトなどを通じて、「知らない誰かと信頼関係が生まれる瞬間」そのものを作品化してきました。そこでは、アーティストと参加者だけでなく、参加者同士の感情のやりとりが蓄積されていきます。

出典:The University of Chicago
リー・ミンウェイ:ダイニング・プロジェクト

出典:TATE
アーティスト、リー・ミンウェイの迷宮へ | テート

リレーショナル・アートは、作品を完成した物として見せるだけでなく、人々が交流したり参加したりする状況をつくることを重視しました。こうした考え方は、2000年代以降に広がったソーシャル・プラクティスなど、人々との協働や社会との関わりを重視するアートとも共通点があります。鑑賞者が作品に参加し、その行動や交流が作品の一部になる表現も、現代アートの重要な方法の一つとなっています。