アントニ・ガウディ(Antoni Gaudí, 1852–1926)の没後100年を迎える2026年、東京・六本木の 21_21 DESIGN SIGHT で「ガウディの窓」をテーマにした特別展が 2026年5月16日(土)から7月12日(日) まで開催される。本展は、スペインの建築家ガウディが手がけた建築の中でも、これまで主題化されてこなかった「窓」という要素に焦点を当て、彼の造形思想と光の扱いに迫る独自の切り口で構成される。
カサ・バトリョ、カサ・ミラ、サグラダ・ファミリアといったバルセロナを代表する建築群は、いずれも色彩豊かなステンドグラスと有機的な開口部によって、室内に独特の光環境を生み出している。本展では、これらの窓を 1/1 スケールの再現模型、図面、写真、映像で展示し、ガウディが「窓」を建築の構造的・象徴的要素として、いかに精緻に設計したかを明らかにする。
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ガウディ建築における「窓」の意味
ガウディの建築は、しばしば アール・ヌーヴォー の潮流の中に位置づけられるが、彼の窓の造形は単なる装飾ではなく、自然の有機的形態を構造原理として取り込む試みであった。ステンドグラスの幾何学パターン、放物線アーチによる開口部、双曲面を用いた屋根面のトップライトなど、ガウディは光を建築に取り込むためにあらゆる幾何学を駆使した。
本展のキュレーターは、「ガウディが窓を通して見ていたのは、光そのものではなく、光を生み出す自然のプロセスである」と語る。バルセロナのカタルーニャ地方に伝わる中世建築や、19世紀ヨーロッパに広まった東洋趣味、そして自然観察に基づくフォルム研究——これらが彼の窓の造形に統合されている。
展示構成の見どころ
展示は3つのセクションで構成される。第1セクションでは、カサ・バトリョのファサードに設えられた「骨のような」窓の造形を、1/1スケールの部分模型で再現する。第2セクションでは、カサ・ミラの内庭側に開けられた異形の窓と、その光の効果を、現代の3Dスキャン技術によって可視化した映像インスタレーションで体験できる。第3セクションは、未完の大聖堂 サグラダ・ファミリア のステンドグラス制作の歩みを、職人の手仕事を記録した映像とともに紹介する。
特にサグラダ・ファミリアのステンドグラスは、現在も建設が続く同聖堂の中で「光の聖堂」と呼ばれる中央身廊を支える要素であり、日本人彫刻家・外尾悦郎をはじめ、世界各地の職人がガウディの遺した設計思想を継承している。本展では、その制作現場のドキュメンタリーが日本初公開される。
関連プログラム
会期中は、建築家・隈研吾、藤本壮介らによるトークセッション、ガウディ研究の第一人者である建築史家による講演会、子ども向けの建築ワークショップが多数開催される予定。21_21 DESIGN SIGHT は安藤忠雄が設計した建築自体が見どころのひとつであり、ガウディ建築との対比を体感できる空間となっている。
没後100年、2026年のガウディ・イヤー
2026年はガウディの没後100年であると同時に、サグラダ・ファミリアの主要な塔の完成が予定されている節目の年でもある。バルセロナ市は記念事業として複数の展覧会・コンサート・シンポジウムを企画しており、日本でも本展のほかに京都・大阪での巡回が検討されている。
近代建築史の文脈でガウディを再考することは、20世紀以降の 現代建築 や 現代アート における自然観・有機性の議論にも直結する。建築ファンだけでなく、デザイン、工芸、現代美術に関心のある来場者にとっても示唆に富む展覧会となる。
ガウディとカタルーニャ・モダニズムの位置づけ
ガウディの活動拠点であったバルセロナでは、19世紀末から20世紀初頭にかけて「カタルーニャ・モダニズム」と呼ばれる芸術運動が花開いた。建築家ではドメネク・イ・ムンタネー、リュイス・プッチ・カダファルクらが同時期に活躍し、絵画では ラモン・カザス や サンティアゴ・ルシニョール、音楽ではアルベニス、グラナドスといった作曲家が登場し、文学・舞台美術を含む総合芸術的な文化運動を形成していた。ガウディの建築は、こうしたカタルーニャ独自の文化的アイデンティティの中で育まれたものであり、単なるヨーロッパ アール・ヌーヴォー の一支流として理解するだけでは不十分である。本展ではバルセロナ市の現地調査資料も交え、19世紀末カタルーニャの社会・文化的文脈の中にガウディを位置づける試みもなされる。
来場者向けの観賞ポイント
21_21 DESIGN SIGHT は六本木・東京ミッドタウン内のガーデン内に位置し、安藤忠雄設計の地下展示空間が特徴。会期中は六本木周辺の 森美術館、サントリー美術館、国立新美術館といった「六本木アート・トライアングル」と組み合わせた一日鑑賞コースが推奨される。チケットは一般1,400円、大学生800円、中高生500円、小学生以下無料。事前予約はオンラインで可能で、土日祝日の混雑時間帯(11時〜15時)を避けると比較的ゆったり鑑賞できる。会場内では建築模型・図面の撮影が一部可能で、SNSへの投稿も歓迎されている。
あわせて 美術史の流れ や アール・ヌーヴォー についての解説記事も参照すると、ガウディ建築の位置づけがより立体的に理解できるだろう。
出典: Tokyo Art Beat「5月スタートのおすすめ展覧会18選」 / 美術展ナビ
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