21_21 DESIGN SIGHTとは:2007年開館、デザインを主題にする日本初の専門施設
21_21 DESIGN SIGHT(とぅーわん とぅーわん デザインサイト)は、東京・六本木の東京ミッドタウン内に 2007 年 3 月開館した、デザインを主題とする日本初の専門ミュージアムである。三宅一生(イッセイ ミヤケ、1938-2022、ファッションデザイナー)の構想から、安藤忠雄が建築設計を担当し、開館時から佐藤卓(1955-、グラフィックデザイナー)、深澤直人(1956-、プロダクトデザイナー)、三宅一生の三人がディレクターを務める運営体制が確立された。
名称「21_21」は、(1)「20/20 vision(視力 20/20、英語で完璧な視力)」を超える「21/21 vision」(21 世紀の見識)を目指す意味、(2)開館年が 21 世紀の早期にあたるという意味、を含む。「DESIGN SIGHT」は「デザインを見る場所」「デザインの現場」の二重の意味を持つ。三宅は 2022 年に没したが、佐藤・深澤の二人のディレクター体制は現在も継続している。
主要トピック:構想・建築・運営
構想:三宅一生の「アジテイテッド・デザイン」
21_21 DESIGN SIGHT の構想は、三宅一生が長く温めていた「日常のデザインを、社会と接続する場」というアイデアに端を発する。三宅は 1980 年代から、衣服に限らない総合的「デザインのあり方」を模索しており、企業・大学・美術館の枠を超えたデザイン専門施設の必要性を提唱した。2003 年に三井不動産(東京ミッドタウンの開発者)と協働して構想がスタートし、2007 年の東京ミッドタウン開業と同時に施設も開館した。
安藤忠雄の建築(2007 完成)
建築設計は安藤忠雄(1941-、プリツカー賞受賞建築家)が手がけた。三宅一生の「一枚の布」というファッション・デザインの哲学を建築化したコンセプトで、屋根は金属の一枚板を折り曲げた独特の形状。地上は二つの低層三角屋根のみが見え、メイン展示空間はすべて地下に広がる構造。地下にもかかわらず、頂部の天窓から自然光が落ちる工夫により、明るく開放的な展示空間を実現している。安藤の代表作の一つで、ミッドタウン・ガーデン側からの俯瞰で建築自体が彫刻のように映える。
三人ディレクター制
三宅一生(ファッション、2022 没)、佐藤卓(グラフィック)、深澤直人(プロダクト)の三人がディレクターを務め、それぞれの専門領域で展覧会を企画する体制が、開館以来一貫して続いている。これは「美術館の権威ある館長」ではなく、「現役のデザイナー三人の協働運営」という独自モデルで、企画展の発想と実施が常にデザイン現場と同期している。
主要企画展
| 展覧会名 | 開催年 | 主題・ディレクター |
|---|---|---|
| 水展 | 2007(開館記念) | 佐藤卓ディレクション |
| XXIc.:21世紀人 | 2008 | 三宅一生ディレクション |
| 骨展 | 2009 | 佐藤卓ディレクション |
| U-Tsu-Wa うつわ展 | 2009 | 深澤直人・ジャスパー・モリソンら |
| デザインあ展 | 2013 | NHK Eテレ「デザインあ」プロジェクト連動 |
| ル・コルビュジエ | 2017 | 建築・家具・絵画 |
| こんにちは、ロボット | 2018 | 深澤直人ディレクション |
| ルール?展 | 2021 | 菅俊一・水野祐・田中みゆき |
| 地球と生きる:気候危機とデザイン | 2024 | サスティナビリティ主題 |
| 東京 100 ペアレント・チャイルド・ヒストリー | 2025 | 東京の親子文化史 |
運営の特徴
- 「デザイン」の広い解釈:プロダクト・グラフィック・建築・ファッションといった伝統的デザイン分野を超え、「水」「骨」「動き」「ルール」「うつわ」「ロボット」「気候危機」など、デザイン的思考を社会の主題に拡張する企画が多い。これは佐藤卓の「八海山のラベルから NHK『デザインあ』まで」「身近なデザインを社会と接続する」アプローチを反映している。
- 展覧会と書籍の連動:各企画展は丁寧な図録(カタログ)が刊行され、展覧会後も書籍として読める形式で残される。これは多くのデザイン展が一過性で終わるのに対し、知の蓄積を狙う独自の運営姿勢。
- 子ども・教育プログラム:年間多数の子ども向けワークショップ、学校団体プログラム、ガイドツアーを開催。「デザインあ展」は NHK 教育の人気番組と連動し、家族連れの主要なデザイン体験施設となった。
- 東京ミッドタウン全体との連動:21_21 DESIGN SIGHT は東京ミッドタウン内のサントリー美術館(六本木アート・トライアングルの一翼)、ミッドタウン・ガーデンの彫刻群、Tokyo Midtown Award(若手デザイナー公募賞)と連動して、ミッドタウン全体を「デザインの場所」として運営する戦略の中核を成す。
歴史的文脈:日本のデザイン文化と六本木
21_21 DESIGN SIGHT の開館は、日本のデザイン文化が国際的に評価される時期と一致する。1990 年代以降、原研哉、佐藤可士和、佐藤卓、深澤直人、隈研吾、安藤忠雄、SANAA らが世界的に注目され、「日本のデザイン」が一つのブランドとして確立した。同時期、無印良品の世界展開、コム デ ギャルソン・イッセイ ミヤケ・ヨウジヤマモトの世界市場での地位、村上春樹の世界翻訳といった文化輸出と並行して、日本のデザインも国際的価値として受け入れられた。21_21 DESIGN SIGHT は、その文化的高揚を制度化する象徴的施設として開館したと位置付けられる。六本木という、新興の現代美術・デザイン地区の中核に立地することで、地理的にも東京の文化的アイデンティティの中心となった。
影響:日本独自のデザイン展のモデル
- 「デザイン展」の概念革新:それまでの「デザイン展」は、家電・家具・グラフィックの完成品を展示する形式が一般的だったが、21_21 DESIGN SIGHT は主題を中心に置き、複数のデザイナーがその主題に応答する形式を導入した。「水展」「骨展」「ルール?展」など、商品ではなく主題から組み立てる方式は、海外の MoMA・テートのデザイン展の形式とも異なる、日本独自のモデルとなった。
- 佐藤卓「デザインあ」プロジェクト:佐藤卓ディレクション下、NHK Eテレの子ども向け番組「デザインあ」と連動した「デザインあ展」(2013、福岡・大阪・東京を巡回)は、累計 200 万人を超える来場者を集め、日本の家族向けデザイン展の最大成功例となった。これは現在「デザインあneo」として継続中。
- 国際的影響:21_21 DESIGN SIGHT のモデルは、近年ソウル・上海・シンガポール・北京・台北など東アジア各地の同種施設のモデルとなった。「Design Center」「Design Museum」と呼ばれる東アジアのデザイン専門施設の多くが、21_21 を直接参照している。
- 若手デザイナーの登竜門:21_21 DESIGN SIGHT の企画展に参加することは、日本の若手デザイナーにとって重要なキャリアステップとなっており、世代をまたいで日本のデザイン界を支える人材交流の場となっている。
来館ガイド
- 所在地:東京都港区赤坂 9-7-6 東京ミッドタウン・ガーデン内。地下鉄日比谷線・都営大江戸線「六本木」駅 8 番出口直結(徒歩 5 分)、千代田線「乃木坂」駅 3 番出口徒歩 5 分。
- 開館時間:10:00-19:00。火曜休館。
- 入館料:企画展ごと 1,200-1,400 円程度。学生割引あり。
- 所要時間:1-1.5 時間。
- 周辺観光:徒歩圏に森美術館・国立新美術館・サントリー美術館があり、六本木アートデーとして 1 日で回ることが可能。
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続けて森美術館を読むと、徒歩圏の三大美術館(森・NACT・21_21)が、現代美術・公募展・デザインで領域分担をしながら東京の文化拠点を形成している様子が立体的に分かる。
