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東京都現代美術館(MOT)とは:1995年開館、戦後日本の現代美術コレクションのハブ

東京都現代美術館(とうきょうとげんだいびじゅつかん、Museum of Contemporary Art Tokyo、通称「MOT」)は、東京都江東区三好、木場公園内にある現代美術専門の都立美術館である。1995 年開館、所蔵約 5,800 点(2024 年時点)、戦後から現代に至る日本・国際の現代美術を体系的に収蔵する、日本最大級の現代美術館である。

MOT の特徴は、(1)戦後日本の現代美術コレクションの体系性もの派具体、ハイレッド・センター、九州派、もの派以後の現代美術家まで網羅)、(2)現代美術と建築・デザイン・写真・映像を横断する展示、(3)大空間を活かした大型インスタレーションの展開、(4)図書館・カフェ・ショップを併設した文化複合施設としての機能、にある。

主要トピック:建物・主要展示

建築

柳澤孝彦+ TAK 建築・都市計画研究所設計、1995 年開館。延床面積約 33,500 ㎡、地上 3 階・地下 2 階。木場公園の緑に囲まれた、白い大規模建築。アトリウム(吹抜けの大空間)、企画展示室(3 つ、計約 4,000 ㎡)、常設展示室、ホール、図書室、レストラン、カフェ、ショップを擁する。

常設展示「MOT コレクション」

所蔵 5,800 点から数百点を選定し、年 4 期に分けてテーマ別に展開。戦後日本の現代美術を時代別・作家別・主題別に再構成する、日本でもっとも体系的な現代美術通史展示として機能している。

主要企画展

毎年 5-6 本の大規模企画展を開催。「ヨーゼフ・ボイス展」(1996)、「マルセル・デュシャンと現代美術」(2004)、「ボディポリティクス」、「日本のメディア・アート」、「キース・ヘリング」(2003)、「フランシス・ベーコン展」(2013)、「アンディ・ウォーホル:ぼくのことは、表面だけ見て」(2014)、「アール・デコ展」(2018)、「ピーター・ドイグ」(2020)、「クリスチャン・マークレー」(2021)、「ホー・ツーニェン」(2024)など、世界的現代美術家の日本での主要受容拠点となっている。

主要所蔵作家

作家・作品分野備考
福田美蘭・横尾忠則絵画・グラフィック戦後日本の代表作家
李禹煥・関根伸夫・菅木志雄もの派運動の主要作品体系収蔵
白髪一雄・嶋本昭三・田中敦子具体美術協会具体の主要作品多数
岡本太郎絵画・彫刻「明日の神話」習作・絵画
横尾忠則グラフィック・絵画シルクスクリーン・絵画多数
草間彌生絵画・彫刻初期から現在まで体系的に
奈良美智・村上隆絵画・彫刻1990年代以降の主要作品
会田誠・池田学・増田セバスチャン絵画・彫刻2000年代以降の現代美術
ロイ・リキテンスタイン・ジェフ・クーンズ欧米ポップ/コンテンポラリー国際的代表作家
奈良原一高・荒木経惟・森山大道戦後日本写真戦後写真の主要作家

歴史:1995 年開館と 2016-2019 年の大規模改修

MOT の前身は、1926 年開設の「東京府美術館」(現・東京都美術館、上野公園内)である。1975 年から「東京都美術館」となったが、戦後日本の現代美術コレクションを専門に収蔵・展示する別館の必要性が高まり、1995 年に MOT が独立館として開館した。当初の所蔵 1,800 点から、開館後の積極的収蔵と寄贈・寄託で、現在は 5,800 点を超えるコレクションに成長した。2016 年から約 3 年間、大規模改修工事のため休館し、2019 年 3 月に再開館。改修により、展示空間・ホール・カフェ・ショップが大幅にリニューアルされ、清澄白河エリア(東京都心東部の再開発エリア)の中核文化施設としての地位が再確立された。

「TOKYO POP」連載とコンテンポラリー受容

MOT の運営において重要だったのが、開館初期の 1996-2003 年に企画された「MOT アニュアル」と「TOKYO POP」展の連続シリーズである。「MOT アニュアル」は若手作家を館主体で発掘・紹介する年次企画展で、現代美術界の新世代台頭の重要な舞台となった。一方、「TOKYO POP」展(1999、椹木野衣キュレーション)は、当時新世代だった村上隆・奈良美智・小沢剛・会田誠・ヤノベケンジら、戦後日本のサブカル文化を背景にもつ作家を集合的に提示し、彼らが後に世界的成功を収める前夜の重要な節目となった。これらの企画は MOT の所蔵方針にも直接結びつき、現在の戦後日本現代美術コレクションの中核を形成している。MOT は単に作品を集めるのではなく、企画を通じて若い世代の作家を体系的に伴走支援する、現代美術の「育成型美術館」として機能してきた点が、他の美術館にはない独自の役割となっている。

清澄白河と「現代美術の街」

MOT が立地する東京都江東区清澄白河エリアは、2010 年代以降、現代美術ギャラリーとサードウェーブコーヒー店が集積する「現代美術の街」として変貌した。Blue Bottle Coffee 日本 1 号店(2015)、Allpress Espresso、ARiSE Coffee、Fukadaso Cafe など人気カフェに加え、東京画廊+BTAP、KEN NAKAHASHI、TARO NASU、児玉画廊、ANOMALY などの現代美術ギャラリーが MOT 周辺に集中する。MOT 一館の集客だけでなく、街全体としての文化的密度が、東京の現代美術観光の新しい中心地を形成している。地下鉄半蔵門線・大江戸線「清澄白河」駅から MOT まで徒歩 13 分、その途中に清澄庭園・深川江戸資料館・木場公園もあり、半日〜1 日かけて回遊できる。

来館ガイド

  • 所在地:東京都江東区三好 4-1-1(木場公園内)。地下鉄半蔵門線・大江戸線「清澄白河」駅徒歩 13 分、東京メトロ東西線「木場」駅徒歩 15 分。
  • 開館時間:10:00-18:00(特別展は金土 21:00 まで)。月曜休館。
  • 料金:MOT コレクション 500 円、企画展は別途 1,500-2,000 円。学生割引・夜間割引あり。
  • 所要時間:MOT コレクションのみ 1.5-2 時間、企画展含めて 3-4 時間。図書室・カフェも含めれば半日以上。
  • 図書室:開架で約 27 万冊の現代美術関連書籍・カタログ・雑誌を擁する。日本最大級の現代美術専門図書室。研究者・学生は予約なしで利用可能。

影響:現代美術館モデルとしての MOT

  • 戦後日本現代美術の保存拠点:もの派・具体・ハイレッド・センターなど、戦後日本のアヴァンギャルド運動の作品体系を散逸させずに保存する、国内で最も重要な機関の一つ。
  • 欧米コンテンポラリーの日本受容拠点:マルセル・デュシャン、フランシス・ベーコン、アンディ・ウォーホル、キース・ヘリング、ピーター・ドイグら世界主要現代美術家の大規模回顧展を継続的に開催し、日本における現代美術受容を支えてきた。
  • 大型インスタレーションの実践拠点:天井高 19 m のアトリウム、4,000 ㎡ の企画展示室といった大空間を活かし、大型インスタレーションの展示で国内屈指。クリスチャン・マークレー、オラファー・エリアソン、ホー・ツーニェンなどの大型作品が展開された。
  • 研究機関としての機能:年間複数の研究シンポジウム、図録カタログの本格的研究刊行物、図書室の充実は、日本の現代美術研究の主要拠点としての MOT の地位を支えている。
  • ファミリー・教育プログラム:子ども向けワークショップ、学校団体来館プログラム、障害者向けアクセシビリティ整備など、現代美術の社会的開放を継続的に推進している。

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続けて森美術館を読むと、東京の現代美術館二大拠点(MOT・森)が、それぞれどう異なる役割で機能しているかが対照的に理解できる。

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