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森美術館とは:2003年開館、東京の超高層ビル最上部に立地する現代美術館

森美術館(もりびじゅつかん、Mori Art Museum、通称「Mori」)は、東京・六本木の六本木ヒルズ森タワー 52-53 階に位置する現代美術専門の私立美術館で、2003 年(平成 15 年)に開館した。森ビル株式会社(六本木ヒルズの開発・運営者)の文化事業として、森稔会長(1934-2012)の「都市と文化の融合」構想のもとで設立された。

森美術館の特徴は、(1)世界の現代美術を網羅的に紹介する企画展中心の運営、(2)地上 230 m の超高層階という独特の立地(東京シティビューと一体化した展示空間)、(3)アジア現代美術の重点的取り扱い、(4)夜間(22 時または 24 時)まで開館する都市型運営、にある。所蔵コレクションも有しているが、運営の中心は年間 4-5 の大型企画展である。

主要トピック:開館記念から現在までの主要企画展

開館記念展

2003 年 10 月、森美術館は「Happiness: A Survival Guide for Art and Life」(祝祭:芸術と生命のためのサバイバル・ガイド)で開館。世界 25 カ国 130 名超の現代美術家による大規模国際展で、開館 4 ヶ月間に約 73 万人の来場者を集め、新美術館の華々しいスタートとなった。同時期、隣接する「東京シティビュー」展望台と森美術館の共通券が販売され、観光と美術鑑賞の融合モデルが立ち上がった。

主要回顧展・主題展

「アンディ・ウォーホル展」(2005、東京・京都巡回)、「ル・コルビュジエ展」(2007)、「アジアの現代美術 1980-2002」(2003)、「カイカイキキ・村上隆」(2008、村上隆主導の自社グループ展)、「ヒロシマ・ナガサキ展」、「メタボリズムの未来都市展」(2011)、「アンディ・ウォーホル 永遠の 15 分」(2014)、「ジャコメッティ展」(2017)、「未来と芸術展」(2019)、「アナザーエナジー展」(2021)、「ヘザウィック・スタジオ展」(2023)、「シアスター・ゲイツ展」(2024)など、毎年の主題が国際的に注目される企画展となっている。

所蔵コレクション

運営の中心は企画展だが、森美術館も独自のコレクションを蓄積している。アジア・日本の現代美術家を中心に、村上隆、奈良美智、草間彌生、宮島達男、塩田千春、李禹煥、ヤンフードン、アイ・ウェイウェイらの主要作品を所蔵する。これらは時折常設展示されたり、海外展覧会への貸出を通じて世界の現代美術市場に流通している。

建物・展示空間

  • 所在地:六本木ヒルズ森タワー 52-53 階。地上約 230 m の高さに展示空間が広がる、世界でも珍しい超高層階の美術館。設計は KPF(コーン・ペダーセン・フォックス)。
  • 展示室:53 階の主展示室は天井高約 6 m、面積約 1,500 ㎡、柱なしの大空間。大型インスタレーションが可能。
  • 東京シティビューとの一体運営:森タワー 52 階の屋内展望台「東京シティビュー」(地上 250 m の屋外展望台「スカイデッキ」を含む)と森美術館は共通エントランス・共通券で運営される。展望と現代美術の二重体験が、森美術館の独自性を支える。
  • 夜間開館:通常美術館が 17 時または 18 時に閉館するのに対し、森美術館は 22 時、火曜のみ 17 時、土日は 22 時までの夜間開館を実施。これは六本木ヒルズの夜間集客と連動した、都市型美術館モデル。

運営:南條史生から片岡真実へ

森美術館の歴史は、二人の館長が決定的な役割を果たした。初代館長・南條史生(なんじょう ふみお、1949-)は、1986-2003 年に独立キュレーターとして横浜トリエンナーレ・台北ビエンナーレ・シンガポール・ビエンナーレ等を手がけ、開館前から森ビル文化事業の方向を主導した。彼の指揮下で、森美術館はアジア現代美術の拠点として国際的地位を確立した。2020 年から二代目館長となった片岡真実(かたおか まみ、1965-)は、長くチーフキュレーターとして森美術館の主要展覧会を担当し、2014 年シドニー・ビエンナーレ、2018 年光州ビエンナーレの共同芸術監督も務めた。2020 年代以降、片岡体制下で美術館はジェンダー・脱植民地・気候変動などの主題を積極的に取り上げる、社会批評的方向性を強めた。

歴史的文脈:六本木の文化的再生

森美術館の開館は、戦後長く米軍関連と歓楽街のイメージが強かった六本木地区を、文化的高級地区へ再生する都市計画と一体だった。1986 年の東京急行電鉄出張所跡地買収から始まる六本木ヒルズ建設は、約 17 年の超長期プロジェクトで、2003 年の竣工とともに森美術館・東京シティビューが開館した。同時期、近隣に開館した東京ミッドタウン(2007、サントリー美術館・21_21 DESIGN SIGHT を擁する)、国立新美術館(2007)と合わせて、六本木は東京の現代美術と高級文化の中核地区へと変貌した。これらは「六本木アート・トライアングル」と称され、海外観光客の東京現代美術観光の主要目的地となっている。

影響・現代美術の世界的ハブ

  • アジア現代美術の代表的舞台:森美術館は中国・韓国・東南アジア・インドの現代美術を継続的に紹介し、欧米中心だった国際美術界の地理的バランスを変える役割を果たしてきた。アイ・ウェイウェイ、シャルジャ・ビエンナーレの主要作家、村上隆ら、アジアの現代美術家を国際舞台へ橋渡しした。
  • 国際美術館連携:テート・モダン(ロンドン)、グッゲンハイム美術館(NY)、ポンピドゥー・センター(パリ)、上海当代藝術博物館などとの共同企画展を継続的に展開し、世界の主要美術館ネットワークの一角を占める。
  • パブリック・プログラム:MAM プロジェクト(若手作家のソロ展示シリーズ)、トーク・シンポジウム、ワークショップを年間数十本開催。日本における現代美術の啓蒙的役割を担う。
  • 「Roppongi Art Night」共同主催国立新美術館・サントリー美術館との連携で、年に一度の都市型芸術祭を主催。
  • カイカイキキとの連携:2008 年「村上隆+カイカイキキ」展は、戦後日本のサブカル文化が国際美術市場に流通する象徴的事例として、森美術館の現代美術観の確立に寄与した。

来館ガイド

  • 所在地:東京都港区六本木 6-10-1 六本木ヒルズ森タワー 52・53 階。地下鉄日比谷線・都営大江戸線「六本木」駅直結。
  • 開館時間:10:00-22:00(火曜のみ 17:00 まで)。会期によって異なる場合あり。
  • 料金:企画展により異なる。1,800-2,000 円程度。東京シティビュー(屋内展望台)と共通券。屋外展望台「スカイデッキ」は別料金。
  • 所要時間:企画展のみで 1.5-2 時間、東京シティビュー含めると 2.5-3 時間。
  • 夜景:夜間(19 時以降)の来館は東京の夜景と現代美術が同時に楽しめる、森美術館独自の体験となる。雨天・曇天時は霧の中の幻想的な雰囲気となり、写真愛好家にも人気。

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続けて東京都現代美術館を読むと、東京都心の現代美術館二大拠点(森・MOT)が、それぞれ高層階と公園内という対照的な立地・運営方式でどう機能を分担しているかが立体的に理解できる。