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19世紀– 19世紀美術の流れ –

19世紀美術ガイドの概要

19世紀は近代美術が形成された世紀です。フランス革命とナポレオン戦争に始まり、産業革命・市民社会の成熟、写真の発明(1839)、印象派の登場(1874)、ジャポニスムの世界的影響、世紀末象徴主義とアール・ヌーヴォーの花開きまで、絵画・彫刻・建築の規範が連続的に塗り替えられました。日本では明治維新(1868)が西洋画と日本画の制度的分化を生み、中国では清末動乱期から海派が登場します。

本ガイドは19世紀を年代軸で串刺しにする横断ハブです。前後は18世紀美術ガイド20世紀美術ガイドを参照してください。

19世紀美術の主要トピック

新古典主義 vs ロマン主義

世紀前半のフランス絵画は、ダヴィッド・アングルの新古典主義(線・古代・理性)と、ジェリコー・ドラクロワのロマン主義(色・ドラマ・情熱)の対立を軸に展開しました。ジェリコー「メデューズ号の筏」(1819)、ドラクロワ「民衆を導く自由の女神」(1830)はロマン主義の象徴。

写実主義 — クールベの宣言

1855年、クールベが「写実主義」展を組織し、神話・歴史画ではなく「同時代の現実」を主題にすることを宣言しました。ミレーのバルビゾン派、マネの「草上の昼食」(1863)とサロン・デ・ルフュゼ事件は、写実主義から印象派への橋渡しです。

印象派と後期印象派

1874年の第1回印象派展(モネ・ルノワール・ピサロ・ドガら)は、戸外制作・色彩分割・瞬間の光を主題化した運動です。1880年代以降、セザンヌ・ゴッホ・ゴーガン・スーラの後期印象派が、印象派の感覚主義を超えて構造・象徴・色彩理論へと展開しました。

象徴主義とアール・ヌーヴォー

世紀末(1890年代)、モロー・ピュヴィ・ド・シャヴァンヌ・ルドン・クノップフ・ベルギーのアンソールらが象徴主義を展開。同時期にミュシャ・オルタ・ガレ・ガウディがアール・ヌーヴォーを国際運動として成立させました。

明治の日本美術

1876年の工部美術学校設立で本格的な西洋画教育が始まり、黒田清輝らの洋画と、岡倉天心・横山大観らの日本画再生運動が並立します。フェノロサと岡倉天心の活動は近代の「日本画」概念そのものを設計しました。

清末中国と海派

清末の動乱期、上海を拠点に任伯年・呉昌碩らの海派(上海画派)が、文人画と都市市民の新しい交点を作り、20世紀中国絵画の起点となりました。

代表作・代表事例

作品作家・所在制作年
メデューズ号の筏ジェリコー(ルーヴル美術館)1819
民衆を導く自由の女神ドラクロワ(ルーヴル美術館)1830
戦艦テメレール号J.M.W.ターナー(ナショナル・ギャラリー)1839
草上の昼食マネ(オルセー美術館)1863
印象・日の出モネ(マルモッタン・モネ美術館)1872
星月夜ゴッホ(ニューヨーク近代美術館)1889
叫びムンク(ノルウェー国立美術館ほか)1893
富嶽三十六景葛飾北斎1830-1832

技法・特徴

  • 戸外制作(プレネール):携帯式チューブ絵具の発明(1841)が戸外制作を可能にし、印象派の即興的色彩主義を支えた。
  • 色彩分割:補色を並置し網膜上で混色させる手法。スーラの点描主義で理論化。詳細はスーラと点描主義
  • 写真と絵画の対立:1839年のダゲレオタイプ発明以降、絵画は「現実の再現」から「画家の視覚と感覚の表現」へと役割を再定義した。
  • ジャポニスム:1860年代以降の浮世絵流入が、構図・平面性・色面の感覚で印象派・後期印象派・アール・ヌーヴォーに浸透した。

影響と後世

後期印象派のセザンヌは20世紀キュビスムを、ゴッホは表現主義を、ゴーガンはフォーヴィスムを準備しました。詳しくはセザンヌと「近代絵画の父」へ。世紀末象徴主義はウィーン分離派(クリムト)を経て、20世紀シュルレアリスムへ連続します。

関連記事

続けてマネ「草上の昼食」を読み解くモネ「印象・日の出」と印象派の誕生を読み比べると、19世紀後半フランス絵画が「主題のスキャンダル」から「視覚の革新」へと推移した10年間が、より鮮明に理解できます。