西洋美術とは:古代ギリシャから現代欧米までの通史
「西洋美術(Western Art)」は、古代ギリシャ・ローマを起点に、中世ヨーロッパ・ルネサンス・バロック・近代・現代へと展開した、ヨーロッパとアメリカを中心とする 3000 年余の美術史の総称である。本サイトの西洋美術カテゴリは、この巨大な領域を 8 つの時代別サブカテゴリに分けて、入門者でも体系的に追える構造で整理している。
西洋美術の特徴は、(1)人体・人間性を中心に置く伝統、(2)キリスト教との長い関係、(3)遠近法・解剖学・色彩理論など科学的手法の発展、(4)個人作家としてのアーティストの確立、(5)美術館・展覧会・批評の制度化、にある。これらは現代の世界美術全体の基本枠組みを規定する遺産となった。
主要トピック:8 つの時代区分
1. 古代ギリシャ・ローマ(BC8〜AD5世紀)
古代ギリシャ・ローマ。BC8 世紀以降のギリシャ陶器・彫刻、古典期のパルテノン神殿、ヘレニズム彫刻、ローマのフレスコ画・モザイク・建築(コロッセウム、パンテオン)。「人体の理想美」と「都市国家の公共芸術」が確立した。
2. 中世ヨーロッパ(5〜14世紀)
中世ヨーロッパ。ビザンティン美術、初期キリスト教美術、ロマネスク聖堂、ゴシック大聖堂、装飾写本、ステンドグラス、バイユーのタペストリー、ジョット。キリスト教信仰を視覚化する宗教美術が中心。
3. ルネサンス(15〜16世紀)
ルネサンス。フィレンツェの初期ルネサンス(ブルネレスキ、ドナテッロ、マサッチオ)、盛期ルネサンス(レオナルド、ミケランジェロ、ラファエロ、ボッティチェリ、ティツィアーノ)、北方ルネサンス(ファン・エイク、デューラー)。古代ギリシャ・ローマの再生と「人間中心主義」の確立。
4. バロック・ロココ(17〜18世紀)
バロック・ロココ。カラヴァッジョのキアロスクーロ、ベルニーニのバロック彫刻、ルーベンス、レンブラント「夜警」、フェルメール、ベラスケス「ラス・メニーナス」、ワトーとフラゴナールのロココ。劇的・絢爛な様式と宮廷文化の絵画化。
5. 新古典主義・ロマン主義(18世紀末〜19世紀前半)
新古典主義・ロマン主義。ダヴィッドの革命絵画、アングルの新古典、ジェリコー「メデューズ号の筏」、ドラクロワ「民衆を導く自由の女神」、ターナーの光の風景、フリードリヒのドイツ・ロマン派、ゴヤの黒い絵。
6. 近代19世紀(19世紀後半)
近代19世紀。クールベのレアリスム、マネ「草上の昼食」、印象派(モネ、ルノワール、ドガ)、後期印象派(セザンヌ、ゴッホ、ゴーガン)、新印象派(スーラ)、象徴主義(ムンク「叫び」)、アール・ヌーヴォー。
7. 近代20世紀前半(1900-1945)
近代20世紀前半。フォーヴィスム(マティス)、キュビスム(ピカソ・ブラック)、表現主義(青騎士・橋)、未来派、ダダ、シュルレアリスム(ダリ「記憶の固執」)、抽象(カンディンスキー、モンドリアン)、バウハウス、ル・コルビュジエ。
8. 現代西洋(戦後〜)
現代西洋戦後〜。抽象表現主義(ポロック、ロスコ)、ポップアート(ウォーホル、リキテンスタイン)、ミニマリズム、コンセプチュアル・アート、フェミニズム・アート、ストリート・アート(バンクシー)。
西洋美術を観る主要美術館
| 美術館 | 所在地 | 強み |
|---|---|---|
| ルーヴル美術館 | パリ | 古代エジプト・古代ギリシャ・ルネサンス・バロックまで |
| ウフィツィ美術館 | フィレンツェ | イタリア・ルネサンスの最大コレクション |
| 大英博物館 | ロンドン | 古代エジプト・古代ギリシャ(パルテノン・マーブル) |
| ナショナル・ギャラリー | ロンドン | 13世紀〜19世紀の西洋絵画通史 |
| プラド美術館 | マドリード | ベラスケス、ゴヤ、エル・グレコ、ルーベンス |
| メトロポリタン美術館 | NY | 古代から現代までの世界美術通史 |
| ニューヨーク近代美術館(MoMA) | NY | 20世紀以降の近現代美術 |
| テート・モダン | ロンドン | 20世紀以降の現代美術 |
| ポンピドゥー・センター | パリ | 20世紀以降の近現代美術 |
| 国立西洋美術館 | 東京・上野 | 松方コレクション中心の西洋美術 |
西洋美術史の重要概念
- 遠近法(透視図法):15 世紀フィレンツェのブルネレスキ・アルベルティが体系化。三次元空間を二次元画面に幾何学的に投影する手法。
- キアロスクーロ:明暗法。光と闇の対比で立体感と劇的効果を生む技法。レオナルド・カラヴァッジョが体系化。
- 図像学(イコノロジー):宗教画・歴史画のモチーフ意味を読み解く方法論。聖人の象徴・聖書の場面・古典神話の引用を体系的に把握する。
- アヴァンギャルド:19 世紀後半以降、既成の美術アカデミーに対抗する前衛的運動の総称。印象派から始まる近代美術の駆動原理。
- ホワイト・キューブ:20 世紀の美術館・ギャラリーの標準的展示空間。白い壁と均一な照明で作品を見せる。これは現代美術の流通基盤。
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続けてルネサンスカテゴリを読むと、西洋美術の最大の転換点(古代再生と人間中心主義の確立)に深く分け入れる。
西洋美術の主要 100 作品
西洋美術 3000 年の通史を、もっとも代表的な 100 作品で把握しようとすると、おおむね次のような 5 段階構造が見える。古代では、パルテノン彫刻、ラオコーン群像、ポンペイ壁画、ラオコーン群像、ローマ皇帝肖像。中世では、ハギア・ソフィア大聖堂、シャルトル大聖堂のステンドグラス、バイユーのタペストリー、ジョット「スクロヴェーニ礼拝堂」。ルネサンス〜バロックでは、ボッティチェリ「春」「ヴィーナスの誕生」、レオナルド「モナ・リザ」「最後の晩餐」、ミケランジェロ「ダビデ」「システィーナ礼拝堂」、ラファエロ「アテネの学堂」、デューラー「メランコリア I」、ファン・エイク「アルノルフィニ夫妻像」、カラヴァッジョ「聖マタイの召命」、ベラスケス「ラス・メニーナス」、レンブラント「夜警」、フェルメール「真珠の耳飾りの少女」。近代では、ダヴィッド「ナポレオンの戴冠式」、ドラクロワ「民衆を導く自由の女神」、ターナー「雨・蒸気・速度」、クールベ「画家のアトリエ」、マネ「草上の昼食」、モネ「印象・日の出」「睡蓮」、セザンヌ「サント=ヴィクトワール山」、ゴッホ「星月夜」、ムンク「叫び」、ロダン「考える人」。20 世紀では、ピカソ「アヴィニョンの娘たち」「ゲルニカ」、デュシャン「泉」、ダリ「記憶の固執」、モンドリアン「ブロードウェイ・ブギウギ」、ポロック「Number 1A」、ロスコ「No. 14」、ウォーホル「キャンベル・スープ缶」、リキテンスタイン「Whaam!」。これらを実物で観るには、欧米日の主要美術館を周遊する旅が必要となる。
西洋美術と日本美術の交差
西洋美術は、19 世紀後半以降、日本美術と劇的な相互交流を経験した。1860 年代からヨーロッパに浮世絵が渡ると、ジャポニスムが起こり、マネ・モネ・ドガ・ロートレック・ゴッホ・クリムト・マティスが浮世絵の構図・平面性・色面を吸収した。逆方向では、明治期日本が西洋絵画を本格導入し、洋画と日本画近代という二大ジャンルを並列で発展させた。20 世紀後半以降、戦後日本美術(具体・もの派・スーパーフラット)は欧米現代美術と並走しつつ独自の方向を示し、村上隆・奈良美智・杉本博司らは欧米中心の現代美術市場で主要作家として活動するに至った。「西洋美術」と「日本美術」は今日では対立概念ではなく、相互浸透した世界美術の二つの軸として理解されるようになっている。
