フィレンツェ、シニョリーア広場のすぐ南。
アルノ川に向かってコの字に伸びる長大な建物が、ウフィツィ美術館(Galleria degli Uffizi)です。
ボッティチェリの「ヴィーナスの誕生」「春(プリマヴェーラ)」が展示されている、それだけで世界中から人が集まる場所。
ですがこの美術館の本当の魅力は、ルネサンス絵画 200 年の歴史を、一筆書きのように歩いて辿れる構造そのものにあります。
ウフィツィ美術館とは
- 所在:イタリア・フィレンツェ
- 設立:1581 年(フランチェスコ 1 世・デ・メディチ)
- 建築:ジョルジョ・ヴァザーリ(1560 年起工、1581 年完成)
- 原語名「Uffizi」は「オフィス(執務室)」の意
- もとはトスカーナ大公国の行政官庁
- 1737 年、最後のメディチ家当主アンナ・マリア・ルイーザの「家族協定」で、コレクションがフィレンツェ市に永久寄贈
- 1769 年から一般公開
- 年間来館者:約 450 万人(2023 年)
建築と空間
- 3 階建て、コの字型の長い回廊
- 3 階(イタリア式の piano nobile)が主な展示階
- 窓からはアルノ川とヴェッキオ橋が見える
- 南端の「ヴァザーリの回廊」はピッティ宮殿まで 1 km 続く秘密通路(要予約)
必見作品トップ 10
1.「ヴィーナスの誕生」サンドロ・ボッティチェリ(1485 頃)
- テンペラ・カンヴァス、172.5 × 278.5 cm
- 第 10〜14 室「ボッティチェリの間」
- 貝殻に乗ったヴィーナスが海から生まれる場面
- 新プラトン主義的な「天上的愛」の象徴
2.「春(プリマヴェーラ)」ボッティチェリ(1480 頃)
- テンペラ・板、203 × 314 cm
- 同じ第 10〜14 室、向かい合わせに展示
- 左にメルクリウス、中央にヴィーナス、右に春の女神フローラ
- 500 種以上の植物が植物学的精度で描かれる
3.「受胎告知」レオナルド・ダ・ヴィンチ(1472-75 頃)
- 第 35 室、現存最古のレオナルド作品の一つ
- 遠近法の習作、20 歳前後の作
- 師ヴェロッキオ工房での共同制作と推定
4.「東方三博士の礼拝」レオナルド・ダ・ヴィンチ(1481-82、未完)
- 下絵段階のまま放棄
- 馬・人物の動きの研究として近代研究で再評価
- レオナルドのミラノ移住直前の重要作
5.「聖家族(ドーニ・トンド)」ミケランジェロ(1506-08)
- 第 41 室、唯一現存するミケランジェロ板絵
- 円形(トンド)、テンペラ、直径 120 cm
- 背景の裸体青年群はシスティーナ礼拝堂天井画の予兆
6.「ヒワの聖母」ラファエロ(1505-06)
- 第 41 室、ラファエロのフィレンツェ期傑作
- ピラミッド構図と柔らかな光
- 1547 年地震で大破するも 19 世紀復元
7.「ウルビーノのヴィーナス」ティツィアーノ(1538)
- 第 83 室、油彩、119 × 165 cm
- ウルビーノ公グイドバルド 2 世の婚礼祝い
- ティツィアーノ、ヴェネツィア派の官能美
- 後にマネ「オランピア」が挑発的に引用
8.「メドゥーサ」カラヴァッジョ(1597-98)
- 第 90 室、円形盾に油彩
- カラヴァッジョ初期、メディチ家の依頼
- 劇的な瞬間:首を切られた直後の表情
9.「バッカス」カラヴァッジョ(1596 頃)
- 同第 90 室、若いバッカスの肖像
- ワインの杯、果物の細密描写
- 左下に画家自身の自画像が映る杯と判明
10.「ウルビーノ公夫妻の肖像」ピエロ・デッラ・フランチェスカ(1465-72)
- 第 8 室、二連画
- 横顔の肖像という古代コインへのオマージュ
- 背景にトスカーナ平野、空気遠近法の早期実例
主要展示室の構成
| 階・部屋 | 主な展示 |
|---|---|
| 第 2 室 | 13 世紀祭壇画、ジョット、チマブーエ、ドゥッチオ |
| 第 7 室 | 初期ルネサンス、フラ・アンジェリコ、マサッチョ |
| 第 8 室 | フィリッポ・リッピ、ピエロ・デッラ・フランチェスカ |
| 第 9 室 | ポッライウオロ兄弟 |
| 第 10〜14 室 | ボッティチェリ、世界最大のコレクション |
| 第 15 室 | レオナルド・ダ・ヴィンチ |
| 第 28 室 | ティツィアーノ |
| 第 35 室 | レオナルド「受胎告知」 |
| 第 41 室 | ミケランジェロ「聖家族」、ラファエロ |
| 第 65 室 | パルミジャニーノ「長い首の聖母」 |
| 第 83 室 | ティツィアーノ「ウルビーノのヴィーナス」 |
| 第 90 室 | カラヴァッジョ |
メディチ家とウフィツィ
収集の系譜
- 15 世紀:コジモ・イル・ヴェッキオ、ロレンツォ・イル・マニフィコによる芸術家庇護
- 16 世紀:コジモ 1 世大公が収集を制度化
- 1581 年:フランチェスコ 1 世がウフィツィ最上階を絵画ギャラリーに改装
- 17-18 世紀:歴代大公がコレクションを増補
- 1737 年:「家族協定」で散逸を防ぎ、フィレンツェ市永久所蔵に
効率的な回り方(半日コース)
必見ルート(2.5 時間)
- 2-7 室:13-15 世紀祭壇画でルネサンス前史を概観(30 分)
- 10-14 室:ボッティチェリ室(30 分)
- 15 室、35 室:レオナルド(20 分)
- 41 室:ミケランジェロ・ラファエロ(20 分)
- 65 室、83 室:マニエリスム・ヴェネツィア派(20 分)
- 90 室:カラヴァッジョ(20 分)
訪問の実用情報
- 住所:Piazzale degli Uffizi 6, Firenze
- 開館:火〜日曜 8:15-18:30、月曜休館
- 入場料:通年 25€、低シーズン 12€(2024 年現在)
- 公式サイトでの事前予約が必須(4€ 加算、当日窓口は数時間待ち)
- ヴァザーリの回廊は別予約・追加料金
- バックパック・大きな鞄はクロークへ
- 写真撮影:原則可、フラッシュ・三脚禁止
周辺の関連施設
- ヴェッキオ宮殿:徒歩 1 分、メディチ政庁
- ピッティ宮殿:徒歩 15 分、メディチ家後期の収蔵
- サンタ・マリア・ノヴェッラ教会:マサッチョ「三位一体」
- ミケランジェロ「ダビデ像」:アカデミア美術館
まとめ|ウフィツィを読む視点
- 13-17 世紀イタリア絵画の正典が一本道で並ぶ世界最高の通史美術館
- メディチ家の趣味と政治が、500 年後の鑑賞体験を形作っている
- ボッティチェリ・レオナルド・ミケランジェロ・ラファエロ・カラヴァッジョが半日で巡れる
あわせて レオナルド・ダ・ヴィンチの世界 や ボッティチェリのヴィーナスの誕生 を読むと、館内体験が立体的になります。
