ローマ、紀元 1-2 世紀。
ギリシャの石柱建築を超え、空間そのものを支配する技術が生まれます。
ローマ建築は、アーチ・ヴォールト・ドーム・コンクリートという 4 つの革新で、後の 西洋建築 全史を形作りました。
目次
ローマ建築の特徴
- 時期:紀元前 753 年(建国伝説)〜紀元 476 年(西ローマ滅亡)
- 原型:エトルリア建築+ギリシャ建築
- 独自要素:アーチ・ドーム・コンクリート・公共建築
- 「実用と壮麗の両立」を目指す
- 属州各地に同様式を展開(ローマ化)
4 つの建築革新
1. アーチ(半円アーチ)
- エトルリアから継承、ローマで全面展開
- 柱間距離を石ではなく石組みで橋渡し
- 中央のキーストーンが荷重を分散
- 「凱旋門」「水道橋」「橋梁」に応用
2. ヴォールト(穹窿)
- 樽型ヴォールト:アーチを連続させた天井
- 交差ヴォールト:直交する樽型を交差
- 大空間の屋根を可能に
- カラカラ浴場、マクセンティウス・バシリカ
3. ドーム(円蓋)
- 球面の天井で大空間を覆う
- パンテオンが頂点(直径 43.3m)
- 中央のオクルス(円窓)から自然光
- ビザンティン・ルネサンスへ継承
4. ローマン・コンクリート(オプス・カエメンティキウム)
- 火山灰(ポッツォラーナ)+石灰+砂利
- 水中でも硬化する驚異的耐久性
- 2000 年経過した今も劣化しない
- 2017 年研究で耐久メカニズム判明(マサチューセッツ工科大学)
- 近代コンクリートを上回る化学安定性
必見ローマ建築 7 選
1. コロッセオ(72-80 年)
- 正式名称:フラウィウス円形闘技場
- 収容人数:約 5 万人
- 4 階建、各階異なるオーダー(ドーリス→イオニア→コリント→コンポジット)
- 地下:剣闘士控え室・猛獣檻・水路
- 所在:ローマ、フォロ・ロマーノ近郊
2. パンテオン(118-128 年、ハドリアヌス帝)
- 「全ての神々の神殿」の意
- 世界最大の無筋コンクリートドーム
- ドーム直径=高さ=43.3m(完全な球体内接)
- オクルス(中央円窓)直径 8.92m
- 608 年からキリスト教会に転用、現在も現役
3. ローマ水道橋
- ローマ市内に 11 本、総延長約 500km
- 勾配 0.15-0.3% の精密な高低差設計
- ポン・デュ・ガール(南仏)、セゴビア水道橋(スペイン)が代表
- 1 日 100 万 m³ の水を都市へ供給
4. カラカラ浴場(212-217 年)
- 面積:33ha(東京ドーム 7 個分)
- 収容:1600 人同時入浴
- 大規模交差ヴォールトの先駆
- 図書館・体育館・庭園を併設
- 後のニューヨーク・ペンシルベニア駅などに影響
5. トラヤヌス帝のフォルム(112 年)
- 建築家:ダマスカスのアポロドーロス
- トラヤヌス帝の戦勝記念複合施設
- トラヤヌス記念柱(高さ 30m、戦勝場面の螺旋浮彫)
6. アッピア街道(前 312 年〜)
- ローマ最古の幹線道路
- 「全ての道はローマに通ず」の語源
- 玄武岩の石畳、両脇に墓地・別荘
7. オスティア・アンティーカの集合住宅
- ローマ近郊の港湾都市
- 多層集合住宅(インスラ)の発掘
- 古代の都市計画と都市生活の実例
建築装飾と材料
| 材料 | 用途 |
|---|---|
| 大理石 | 柱・装飾(カララ・ペンテリコン産) |
| トラバーチン | 外装石材(コロッセオ) |
| レンガ | コンクリート構造の被覆 |
| ローマン・コンクリート | 構造体・ドーム |
| モザイク | 床面・浴場壁面 |
| フレスコ | 壁面装飾 |
都市計画の革新
- カルド(南北軸)とデクマヌス(東西軸)の格子
- フォルム(中央広場)に神殿・バシリカ・市場を配置
- 下水道(クロアカ・マクシマ)の体系
- 公衆浴場・劇場・闘技場の標準パッケージ
- ローマ化政策で属州にも複製
後世への影響
- ビザンティン建築:パンテオン→ハギア・ソフィア
- ロマネスク・ゴシック:アーチ・ヴォールト技法を継承
- ルネサンス:パッラーディオがローマ別荘建築を再構築
- 18-19 世紀新古典主義:パンテオン型ドームが公共建築の規範
- 米国議会議事堂、英ナショナル・ギャラリー、パリ・パンテオン
- 近代:オーギュスト・ペレ、ル・コルビュジエもコンクリート技法に学ぶ
主要研究と建築論
- ウィトルウィウス『建築十書』(前 1 世紀):建築理論の古典
- ピラネージの版画(18 世紀):ローマ廃墟をヨーロッパに広める
- ジェームス・ステュアート、ニコラ・ルヴォワ『古代建築』(18 世紀)
- 20 世紀:A・ボエティウス、ヤン・パッカルらの体系研究
まとめ|ローマ建築を読む視点
- アーチ・ヴォールト・ドーム・コンクリートの四大革新
- 「実用」と「壮麗」を両立した公共建築の祖
- 都市計画・水道・道路の体系化
- 2000 年生き続ける建築技術と都市モデル
続けて パルテノン神殿と古典様式 や ハギア・ソフィア大聖堂の構造美 を読むと、古代から中世への建築継承が立体的に見えてきます。

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