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17世紀– 17世紀美術の流れ –

17世紀美術ガイドの概要

17世紀はヨーロッパでバロック様式が頂点に達した時代であり、同時にオランダ共和国で市民社会向け絵画市場が世界で初めて成立した「オランダ黄金時代」でもあります。日本では江戸時代が始まり、琳派と狩野派が並立。中国では明から清への王朝交替が美術にも大きな転換をもたらしました。

本ガイドは17世紀を年代軸で串刺しにする横断ハブです。前後は16世紀美術ガイド18世紀美術ガイドを参照してください。

17世紀美術の主要トピック

カトリック・バロック

反宗教改革を背景に、ローマを中心としたカトリック圏でバロック様式が確立します。カラヴァッジョのテネブリスム(強い明暗対比)、ベルニーニの彫刻と建築、ボッロミーニの建築、ルーベンスのフランドル絵画、ベラスケスのスペイン宮廷絵画は、この潮流の主要な達成です。

オランダ黄金時代

1581年に独立したオランダ共和国では、プロテスタントゆえに教会注文がなくなり、市民層向けの肖像・風俗・風景・静物・海洋画など多様な専門ジャンルが市場経済として成立しました。レンブラント、フェルメール、フランス・ハルス、ヤン・ステーン、ロイスダールらが中心です。

フランドル・カトリック絵画

同じ低地地方でも、スペイン領フランドル(現ベルギー)はカトリック圏に留まり、ルーベンス工房とヴァン・ダイクが宮廷・教会向けの大画面絵画を量産しました。両地域の絵画市場は、宗教構造の違いで大きく分岐した好例です。

フランス古典主義とアカデミー

ルイ14世のもとでフランス王立絵画彫刻アカデミーが整備され、プッサン、クロード・ロランによる古典主義風景画が、後のヨーロッパ美術教育の規範になりました。世紀末にはヴェルサイユ宮殿が完成します。

明清交替と中国絵画

1644年の明清交替は、四王(王時敏・王鑑・王翬・王原祁)の正統文人画と、八大山人・石濤らの「個性派」画家を生みました。陶磁では康熙・雍正・乾隆の清三代が世界陶磁の黄金期を築きます。

江戸初期の琳派と狩野派

日本では本阿弥光悦・俵屋宗達が後の琳派の基盤を作り、狩野探幽が江戸城・京都御所の障壁画を統括しました。風神雷神図屏風(俵屋宗達)はこの時期の代表的傑作です。

代表作・代表事例

作品作家・所在制作年
聖マタイの召命カラヴァッジョ(サン・ルイジ・デイ・フランチェージ聖堂)1599-1600
聖テレジアの法悦ベルニーニ(サンタ・マリア・デッラ・ヴィットーリア聖堂)1647-1652
夜警レンブラント(アムステルダム国立美術館)1642
真珠の耳飾りの少女フェルメール(マウリッツハイス美術館)1665頃
ラス・メニーナスベラスケス(プラド美術館)1656
キリスト降架ルーベンス(聖母大聖堂、アントウェルペン)1612-1614
風神雷神図屏風俵屋宗達(建仁寺)17世紀前半

技法・特徴

  • テネブリスム:強い直接光と深い暗部のコントラスト。カラヴァッジョの光と闇に詳述。
  • 市民肖像画:オランダでは集団肖像画(市民組合・解剖学講義)という独自ジャンルが発達。詳細はフランス・ハルスとオランダ集団肖像画
  • カメラ・オブスキュラ:フェルメールが光学装置を用いた可能性が議論される。光と空間の精密表現。
  • 金地装飾の様式化:俵屋宗達は金地に大胆な動勢を描き、後の琳派の様式を準備した。

影響と後世

バロックの劇的様式は18世紀ロココへと洗練され、フランスではワトー・ブーシェ・フラゴナールに連続します。オランダ黄金時代の市民風景画と風俗画は、19世紀フランスのバルビゾン派印象派を準備しました。琳派は葛飾北斎を経て20世紀のジャポニスムに連続します。

関連記事

続けてレンブラント「夜警」を読み解くベラスケス「ラス・メニーナス」を読み解くを読み比べると、同じ17世紀の集団肖像画でもオランダ市民社会とスペイン宮廷とで「視線」の意味がどう違うかが立体的に見えてきます。