このページは「シルクスクリーン」(technique-silkscreen)タグの全体ガイドです。シルクスクリーン(silkscreen)はスクリーン(網)にインクを通して紙・布・キャンバスに刷る孔版(こうはん)印刷技法で、20世紀にはアンディ・ウォーホル・ロイ・リキテンスタインらによってポップ・アートの主要技法として広く用いられました。
シルクスクリーンとは何か
シルクスクリーン(セリグラフィ、screen printing)は、絹・ナイロン・ポリエステルなどの細かい網目を張ったスクリーンの上から、スキージ(ヘラ)でインクを押し込むことで紙やキャンバスに転写する版画技法です。網目の一部を感光乳剤・カッティングシートでマスクして、印刷したくない部分を遮蔽します。
- 孔版:凸版・凹版・平版に続く第4の版式
- 東洋の型紙染(ステンシル)に源流
- 20世紀初頭に米国で商業印刷として確立
- 1950-60年代に美術技法として一般化
シルクスクリーンの主要トピック
1. 起源と商業印刷
シルクスクリーンの原型は、東洋の型紙染め・ステンシルに遡りますが、近代的な技法は1907年に米国で特許化されたサミュエル・サイモンのスクリーン・プリント機が嚆矢です。1910-30年代には看板・ポスター・包装などの商業印刷で発展しました。
2. WPA 連邦美術計画
1930年代米国のWPA 連邦美術計画で、シルクスクリーンは「セリグラフ(serigraph)」として芸術技法に格上げされました。アンソニー・ヴェロネスらが作家活動を始め、商業性と芸術性の橋渡しが進みました。
3. ウォーホルと『マリリン』
1962年、アンディ・ウォーホルは『マリリン・モンロー』『キャンベルのスープ缶』でシルクスクリーンを本格的にファイン・アートに導入しました。キャンベルのスープ缶やウォーホルとポップアート革命で詳述するように、大量生産・複製・反復を主題とするポップ・アートの本質的技法となりました。
4. リキテンスタインのドット表現
ロイ・リキテンスタインはベンデイ・ドット(コミック印刷の網点)をシルクスクリーンで再現し、漫画絵画の典型を確立しました。
5. ラウシェンバーグの転写
ロバート・ラウシェンバーグは1962年から、報道写真・歴史的画像をシルクスクリーン転写し、油彩と組み合わせる「シルクスクリーン・ペインティング」を制作。『リトリーヴァル』『リテイナー』連作が代表作です。
6. 日本の戦後シルクスクリーン
日本でも1960年代以降、横尾忠則・池田満寿夫・靉嘔(あいおう)・草間彌生らがシルクスクリーンを採用。横尾忠則はサイケデリックなポスターでシルクスクリーンを駆使し、世界的に高い評価を得ました。
7. ストリート・アートと商業展開
1970-80年代の米国ではキース・ヘリング・ジャン=ミシェル・バスキアがシルクスクリーンを実践。バンクシーは現代でもシルクスクリーン版画を主要メディアとし、政治批評と複製性を組み合わせるストリート・アートの基本技法です。
8. T シャツ・アパレル文化
シルクスクリーンはT シャツ・トートバッグ・アパレルの主要印刷技法でもあり、商業デザインとファイン・アートの境界に位置します。21世紀にはシュプリーム・グラフィティ系ブランドの隆盛で、ストリート・カルチャーの重要メディアとなっています。
代表的なシルクスクリーン作品
| 作家・作品 | 年代 | 特徴 |
| ウォーホル『キャンベルのスープ缶』 | 1962 | 商品ラベルの複製 |
| ウォーホル『マリリン・モンロー』 | 1962 | 女優の顔の反復 |
| ウォーホル『毛沢東』連作 | 1972 | 政治家の肖像版画 |
| リキテンスタイン『シー・ティン・ティン』 | 1965 | ベンデイ・ドット再現 |
| ラウシェンバーグ『リトロアクティヴ I』 | 1963 | 報道写真の転写 |
| ヴェロネス『木立』 | 1939 | 初期セリグラフの傑作 |
| 横尾忠則『腰巻きお仙』 | 1966 | サイケデリック・ポスター |
| キース・ヘリング『無題』 | 1980s | ストリート・グラフィック |
| バスキア『無題』連作 | 1980s | 新表現主義版画 |
| バンクシー『花を投げる男』 | 2003- | 政治批評ストリート |
技法・特徴
- 網目の細かさ:1インチあたり80-300本のメッシュで線質が決まる
- 感光乳剤:露光・現像で透過部分(画像)を作る
- カッティングシート:手作業でマスク作成も可能
- 多色刷り:色ごとに版を分け、刷り重ねる
- インク:水性・油性・UVインク・蛍光・メタリックなど多様
- 基底材:紙・布・木・金属・プラスチックほぼ全素材に対応
- 大量複製:1版で数百〜数千枚の同一画像を量産可能
影響・現代の動向
シルクスクリーンは商業印刷とファイン・アートを最も深く接続した版画技法です。ウォーホル以降、大量生産・反復・記号を主題とする現代美術の基本メディアとなり、ストリート・アート・パブリック・アート・アパレル文化と接続しています。21世紀にはデジタル印刷に押される一方、手作業の暖かみ・限定版の希少性を求める作家・コレクターの支持で復権が進んでいます。版画の歴史を理解する重要技法です。
シルクスクリーンを深める関連記事
続けてウォーホルタグとポップ・アートタグを読むと、シルクスクリーンが20世紀後半の美術と消費社会の関係を結節した経緯が把握できます。