知識ゼロからの美術鑑賞プログラム→

村上隆とスーパーフラット|オタク文化と日本美術史を接続する

笑顔で増殖する花、ピンクの髑髏、漫画的な目玉。
2 次元の極限まで平らな画面。

村上隆(1962〜)は、日本の現代アートを世界に押し上げた作家です。

その理論的な核が、「スーパーフラット」と呼ばれる芸術運動でした。

目次

村上隆の生涯

  • 1962 年: 東京・板橋に生まれる
  • 1986 年: 東京藝術大学美術学部日本画科入学
  • 1993 年: 同大学院博士課程修了(日本画専攻初の博士号)
  • 1996 年: 工房「ヒロポン・ファクトリー」設立
  • 2000 年: 「スーパーフラット」展(パルコギャラリー)
  • 2007 年: ロサンゼルス現代美術館(MOCA)回顧展
  • 2010 年: ヴェルサイユ宮殿で個展(賛否両論)

スーパーフラットとは

2000 年に村上が提示した、日本美術と現代視覚文化を貫く概念です。

三つの意味

  • 形式的フラットネス:影・遠近を排した平面性
  • 歴史的フラットネス:高級美術と大衆文化の階層消滅
  • 社会的フラットネス:戦後日本の経済・文化の水平化

日本美術史との接続

  • 琳派の装飾性・金地
  • 狩野派の障壁画
  • 浮世絵の輪郭線と平面色
  • 戦後アニメ・マンガの平面表現

これらを「平面性」という共通項で結びつける、大胆な美術史読み替えです。

主要モチーフ

DOB 君(ドブ君)

  • 1993 年に登場した村上のオリジナルキャラクター
  • ミッキーマウスとドラえもんの混合
  • 「DOB」は「dobozite-doboshite-oshamanbe」(無意味な擬音)の頭文字
  • キャラクター文化への問いかけ

お花(カイカイキキの花)

  • 笑顔の花が画面を埋め尽くす
  • かわいさの過剰、量産の暴力
  • ファッション・グッズに展開

髑髏(スカル)

  • 「727」「727 トラスト・ミー」などの金地連作
  • かわいさと死、装飾と崩壊

727 シリーズ

  • 金地のパネルに DOB 君を配した連作
  • 琳派的な金箔と現代キャラクターの融合

カイカイキキ(Kaikai Kiki)

2001 年に「ヒロポン・ファクトリー」を改組して設立された会社。

  • 村上の制作・マネジメント・芸術祭運営
  • 東京・三軒茶屋とニューヨーク・ロサンゼルスに拠点
  • 多数のアシスタント・コラボレーター
  • 奈良美智・奈良美智のような他作家のプロデュースも

GEISAI(芸際)

  • 2002 年から開催した若手作家公募展
  • 多数の若手アーティストが世に出る
  • 2014 年に終了、後継企画も継続

主要展覧会

「Superflat」展(2000)

  • パルコギャラリー(東京)
  • 2001 年から米国巡回
  • 運動の出発点、村上が監修・図録執筆

「Little Boy」展(2005、ニューヨーク)

  • ジャパン・ソサエティーで開催
  • 戦後日本の幼児化したサブカル文化を分析
  • 原爆「リトルボーイ」とサブカル「リトルボーイ」を重ねる

ヴェルサイユ宮殿個展(2010)

  • 「アニメ・キャラがフランス王宮を侵犯した」と賛否
  • 古典空間と現代キャラクターの衝突
  • 世界的な議論を巻き起こす

「五百羅漢図」展(2015、森美術館)

  • 東日本大震災後に取り組んだ全長 100 メートルの大壁画
  • 狩野派の障壁画と仏教図像を翻案
  • 森美術館で日本初公開

商業との関わり

村上は、ハイアート/ロウアートの境界を意識的に消去します。

  • ルイ・ヴィトン(2003〜2015):マルチカラー・モノグラム
  • カニエ・ウェスト『Graduation』ジャケット(2007)
  • ビリー・アイリッシュ・ドレイクなどとの最近のコラボ
  • 「商業=悪」とする近代的アート観への挑戦

批判と評価

批判

  • 「商業主義に堕した」
  • 「日本文化を西洋向けに単純化した」
  • 「日本国内では西洋ほど評価されない」

評価

  • 戦後日本美術を国際的に位置づけた理論家
  • ウォーホルに並ぶ商業/芸術の操作者
  • サブカルチャーを美術史に接続した先駆

同時代との関わり

  • 奈良美智と並ぶ「J ポップアート」の代表
  • 草間彌生世代を継ぐ国際的日本人作家
  • 会田誠・小沢剛らとの並走関係

主な所蔵先

  • ロサンゼルス現代美術館(MOCA)
  • MoMA(ニューヨーク)
  • カルティエ現代美術財団(パリ)
  • 森美術館(東京)
  • 個人コレクター(フランソワ・ピノー、スティーヴン・コーエンら)

まとめ|村上隆を読む視点

  • 琳派・狩野派・浮世絵とアニメ/マンガを「平面性」で接続
  • 商業とアートの境界を意識的に消去した戦略家
  • 戦後日本美術を世界の現代アート市場に押し出した理論家

日本現代美術を学ぶうえで、草間彌生と並ぶもう一本の太い柱が村上隆です。

あなたの意見を聞かせてください

コメントする

目次