このページは「アメリカ合衆国」(country-usa)タグの全体ガイドです。アメリカ合衆国は、19世紀のハドソン・リバー派から20世紀の抽象表現主義・ポップ・アート・ミニマリズムを経て、21世紀現代美術の中心として世界をリードしてきた国です。
アメリカと美術の関係
独立後の19世紀、米国美術は欧州模倣から脱して独自のアイデンティティを模索しました。1913年アーモリー・ショーで欧州モダンアートが流入、1940年代の戦後にはニューヨーク派が誕生し、20世紀後半に世界アートの中心へと躍進しました。21世紀には、多様な人種・移民背景・地域文化が混在する米国アートの厚みが世界的に評価されています。
- 独立期〜19世紀:肖像画・歴史画・風景画の確立
- 19世紀後半:写実主義・印象派の米国版展開
- 20世紀:現代美術の中心地として君臨
- 21世紀:多様性と多文化の現代アートを世界へ発信
アメリカ美術の主要トピック
1. 独立期と肖像画
独立期(18世紀末〜19世紀初)の米国では、ジョン・シングルトン・コプリー、ベンジャミン・ウェスト、ギルバート・スチュアートらが肖像画と歴史画を発展させました。スチュアートのジョージ・ワシントン肖像はドル札の図像として今も流通しています。
2. ハドソン・リバー派
19世紀中頃、トマス・コール、フレデリック・チャーチ、アルバート・ビアスタットらはニューヨーク州ハドソン川流域の風景を雄大に描き、ハドソン・リバー派と呼ばれました。アメリカ大陸の壮大な自然をロマン主義的に讃美した、米国最初の独自絵画運動です。
3. ウィスラー、サージェント、ホーマー
19世紀後半には、欧州留学組のジェームズ・マクニール・ウィスラー、ジョン・シンガー・サージェントが国際的名声を獲得しました。ウィンスロー・ホーマーはアメリカの自然・労働・海を独自の写実で描き、米国絵画の象徴的存在となりました。
4. アッシュカン派とアメリカン・シーン
20世紀初頭のアッシュカン派(ロバート・ヘンライ、ジョン・スローンら)は、ニューヨーク下町の労働者生活を描きました。1920〜30年代のアメリカン・シーン絵画(エドワード・ホッパー、トマス・ハート・ベントン、グラント・ウッド)はアメリカ的孤独と地方都市の風景を主題化しました。
5. 抽象表現主義(ニューヨーク派)
1940〜50年代、ジャクソン・ポロックのドリッピング、マーク・ロスコのカラーフィールド、ウィレム・デ・クーニングの『女性』連作、バーネット・ニューマンらが抽象表現主義を確立しました。クレメント・グリーンバーグの批評が運動を理論的に支えました。
6. ポップ・アート
1960年代のポップ・アートは、ウォーホル『キャンベル・スープ缶』『マリリン・モンロー』、ロイ・リキテンスタイン『コミック』連作、ジェームズ・ローゼンクイスト、トム・ウェッセルマンら大量消費社会の表象を扱いました。
7. ミニマリズム・コンセプチュアル・現代
1960〜70年代以降、ドナルド・ジャッド・ダン・フレイヴィン・カール・アンドレのミニマル、ソル・ルウィット・コスース・バリー・フラナガンのコンセプチュアル、ロバート・スミッソン・マイケル・ハイザーのアースワーク、ジャン=ミシェル・バスキア・キース・ヘリングのグラフィティ、ジェフ・クーンズ・シンディ・シャーマンのピクチャーズ世代と多様に展開しました。
アメリカ美術の代表作家
| 作家 | 時期 | 代表作・特徴 |
| ギルバート・スチュアート | 1755-1828 | 『ジョージ・ワシントン肖像』 |
| トマス・コール | 1801-1848 | ハドソン・リバー派の祖 |
| ウィンスロー・ホーマー | 1836-1910 | 『ガルフ・ストリーム』 |
| ジョン・シンガー・サージェント | 1856-1925 | 『マダムX』 |
| ジェームズ・マクニール・ウィスラー | 1834-1903 | 『母の肖像』 |
| エドワード・ホッパー | 1882-1967 | 『ナイトホークス』 |
| ジョージア・オキーフ | 1887-1986 | 花卉・砂漠の抽象 |
| ジャクソン・ポロック | 1912-1956 | 『One』『収束』 |
| マーク・ロスコ | 1903-1970 | カラーフィールド絵画 |
| ウィレム・デ・クーニング | 1904-1997 | 『女性』連作 |
| アンディ・ウォーホル | 1928-1987 | 『キャンベル・スープ缶』 |
| ロイ・リキテンスタイン | 1923-1997 | 『泣く女』 |
| ジャスパー・ジョーンズ | 1930- | 『国旗』『標的』 |
| ジャン=ミシェル・バスキア | 1960-1988 | ストリート+ニュー・ペインティング |
| シンディ・シャーマン | 1954- | 『無題映画スティル』 |
| カラ・ウォーカー | 1969- | 切り紙シルエットで人種史 |
アメリカ美術の特徴
- 移民と多様性:欧州・アジア・中南米・アフリカ系作家の集積
- 市場の厚み:オークション・ギャラリー・コレクター層が世界最大
- 地理的拠点:ニューヨーク・ロサンゼルス・シカゴ・サンフランシスコ・マイアミ
- 大学・美術館の連携:イェール、ハーバード、コロンビア、UCLA、CalArts
- パブリック・アート:連邦・州・市レベルの公共芸術委託
- ハリウッド・テック・テクノロジーと結びついた映像・デジタル・NFT
影響・現代の動向
21世紀のアメリカ美術は、黒人作家(カーリー・ジェームズ・マーシャル、ケヒンデ・ワイリー、エイミー・シェラルド)、ラテン系(テレシタ・フェルナンデス、ジュリー・メハレトゥ)、女性(ブライス・マーデン、ケイティ・グランド、シンディ・シャーマン)が国際的に評価されています。美術館の脱植民地化、コレクションの多様化、地域美術館の活性化が進む一方、市場の超高額化と作家の貧困化の格差問題も浮上しています。
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続けてニューヨークタグと抽象表現主義タグを読むと、アメリカ合衆国が20世紀後半に世界アートの中心となった経緯が立体的に把握できます。