このページは「アッサンブラージュ」(technique-assemblage)タグの全体ガイドです。アッサンブラージュ(assemblage、組立)は既製品・廃材・日用品など多様な物体を組み合わせて立体作品を作る技法で、「立体のコラージュ」とも呼ばれます。コラージュ・レディメイドと並ぶ20世紀現代美術の重要技法です。
アッサンブラージュとは何か
アッサンブラージュは、既製品(ファウンド・オブジェ)・廃材・日用品・部品・布・木材などを集めて組み立て、立体作品として提示する技法です。1953年、ジャン・デュビュッフェがこの用語を提唱し、1961年のニューヨーク近代美術館(MoMA)展「アッサンブラージュの芸術(The Art of Assemblage)」で美術界に定着しました。
- 1912年頃、ピカソの『ギターと果物皿』など立体構成が起源
- 1953年、デュビュッフェが「アッサンブラージュ」と命名
- 1961年、MoMA 大規模回顧展で美術史的位置確立
- ダダ・シュルレアリスム・ネオ・ダダ・ポップ・アートと接続
アッサンブラージュの主要トピック
1. ピカソとキュビスム彫刻
1912年、ピカソは板紙・木片・ロープを組み合わせた『ギター』を制作。これは「彫刻における最初のアッサンブラージュ」とみなされ、後のあらゆる組立芸術の出発点となりました。キュビスムの絵画革命を立体に拡張した実践です。
2. デュシャンとレディメイド
マルセル・デュシャンのレディメイド(1913-)は、選択された既製品をそのまま提示する姿勢で、後のアッサンブラージュの哲学的基盤を提供しました。
3. シュヴィッタースの『メルツ』
1919年、ドイツのクルト・シュヴィッタースは「メルツ(Merz)」と称する廃材コラージュ・アッサンブラージュを開始。ハノーヴァーの自宅を改造した『メルツバウ』は家全体が一つのアッサンブラージュで、ナチスの検挙を受けて第二次大戦中に破壊されました。
4. シュルレアリスムとオブジェ
シュルレアリスムのジョセフ・コーネル(米)、メレット・オッペンハイム(スイス)、サルバドール・ダリらは、「シュルレアリスム・オブジェ」として既製品を組み合わせた幻想的アッサンブラージュを制作。コーネルの『箱』連作(1930-70)は20世紀の傑作群です。
5. デュビュッフェとアール・ブリュット
1953年、ジャン・デュビュッフェは「アッサンブラージュ」という用語を造語し、砂・小石・蝶の羽・植物を画面に組み合わせる作品群を発表。アウトサイダー・アートの概念と並走しました。
6. 1960年代のネオダダ・新現実主義
1960年代のヌーヴォー・レアリスム(新現実主義)では、アルマン(圧縮自動車)、セザール(圧縮金属)、ニキ・ド・サンファル、ダニエル・スポエッリ(食卓のスナップ)らが廃材・廃車・食物を組み立てた大型アッサンブラージュを制作。米国ではロバート・ラウシェンバーグの『コンバイン』連作も同時代のアッサンブラージュです。
7. ジョージ・シーガルと等身大彫刻
米国のジョージ・シーガルは石膏で型取りした等身大人形と実物のベンチ・看板・自販機を組み合わせた環境的アッサンブラージュを制作。ポップ・アートと環境彫刻の交差点に位置します。
8. 現代のアッサンブラージュ
21世紀にはエル・アナツィ(ガーナ、ボトルキャップ作品)、トーマス・ハーシュホーン(瓦礫風インスタレーション)、ベティ・サアール、デヴィッド・ハモンズらが、消費社会・植民地・人種を主題化するアッサンブラージュを発展させています。
代表的なアッサンブラージュ作品
| 作家・作品 | 年代 | 素材構成 |
| ピカソ『ギター』 | 1912-14 | 板紙・木材・ロープ |
| デュシャン『自転車の車輪』 | 1913 | 車輪+椅子 |
| シュヴィッタース『メルツバウ』 | 1923-37 | 家全体+廃材 |
| コーネル『メディチ家のスロット』 | 1942 | 木箱+写真+小物 |
| オッペンハイム『毛皮の朝食』 | 1936 | カップ+毛皮 |
| ピカソ『雄牛の頭』 | 1942 | 自転車サドル+ハンドル |
| アルマン『集積』連作 | 1960s | 同種大量物品の集合 |
| セザール『圧縮』連作 | 1960s | 圧縮自動車 |
| ラウシェンバーグ『モノグラム』 | 1955-59 | 絵画+ヤギ+タイヤ |
| エル・アナツィ『土地の運命』 | 2010 | ボトルキャップ大型壁面 |
技法・特徴
- 既製品の利用:購入・収集・廃材・拾得物
- 組立・接着:ボルト・釘・接着剤・溶接・縫合
- 立体性:絵画やコラージュより空間的
- 素材の多様性:金属・木材・布・ガラス・プラスチック・有機物
- 場所性:床置き・吊り下げ・壁面・環境型まで
- 消費社会批評:廃棄物・大量生産品の再文脈化
- 保存課題:素材の経年劣化・有機物の腐敗対策
影響・現代の動向
アッサンブラージュは「彫刻=塊から削り出すか盛りつける」という近代的彫刻概念を解体し、既存の物体を組み合わせる第3の道を提示しました。20世紀後半以降のインスタレーション・サイトスペシフィック・関係性のアートはすべてアッサンブラージュの延長線上にあります。21世紀には消費社会・廃棄物・環境問題・植民地遺産を主題化する作家が世界中で展開し、アートとテクノロジーや持続可能性論とも接続しています。
アッサンブラージュを深める関連記事
続けてレディメイドタグとミクストメディアタグを読むと、選択(レディメイド)→組立(アッサンブラージュ)→混合(ミクストメディア)と続く現代美術の物質論の系譜が立体的に把握できます。